憲法では禁止してはいない。では民法は?
木村草太准教授は憲法学者ですからここでオワリでもOKなのですが、民法についても話してくれました。
民法には「こういう場合には結婚できないよ」と定めた婚姻障害という項目がありますが、そこには「同性間による婚姻」という項目はありません。そのため「今、婚姻届を出したときに絶対に受理されないとは言えない」とのこと。「むしろ不受理は不当だとして裁判を起こした事例がないのが不思議」とまで仰っていました。
ただ、「夫婦」「妻・夫」という言葉が使われているから、民法の婚姻規定は男女に限られているのではないかと想定され、現行民法では同性婚は想定されないとする解釈が一般的だそうです。
とはいえ夫婦・妻・夫を性別を問わない言葉に読み替えれば、改正は難しくないとの見解。
ちなみに「婚姻障害」に定められているのは、「婚姻適齢(女は16歳、男は18歳)に達していないこと」「重婚」「再婚禁止期間」「近親婚」「未成年者の婚姻について父母の同意がない」の5つです。確かにどこにも「同性同士である」とはありませんね。
議論を切り分けて、丁寧に議論す
最後に印象に残った話について、少しだけご紹介します。
同性婚について、「少子化に拍車がかかる」「いやいや、養子を取る家庭が増えるかもしれない」という側面から議論がされることがあります。この点について木村草太准教授は、「せせこましい議論に引っ張られないことが必要です」と一蹴。少子化対策に有意義だから法律で保護する、というのは本質ではありません。少子化と同性婚の問題を一緒くたに議論するのは確かにナンセンス。
「レズビアンカップルが同性婚をし、一方が出産した場合、“父親”は誰なのか」という議論についても同様のことが言えますよね。木村草太准教授は子供に関する部分については「慎重に議論する必要がある」と語り、「異性婚の婚姻関係の場合でも、親子関係と婚姻関係を切り離す。それから(それぞれ別に)考えることが必要」との考えを示しました。
これから同性婚の話は、あらゆる問題とセットで議論されるでしょう。ひとつひとつ丁寧に切り分けて議論することが、今後ますます求められていくとのことでした。
制度は「ないよりあったほうがいい」。
法律は万能ではありませんし、制度がすべての問題を解決してくれるわけではありません。それでも、これらが人々の意識を変えるものであることは確かです。
“同性婚を認める制度は「ないよりあったほうがいい」。”
パネリストで登壇した小川葉子さんの言葉が胸に刺さります。
法整備が「必要か必要でないか」ではなく「ないよりあったほうがいい」という気持ちで議論されれば、LGBTを取り巻く状況は少しずつ良い方向に動いていくでしょう。
(文=此方マハ)
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