NHK「クローズアップ現代」10月5日の放映は〈ニッポンの女性はやせすぎ!?〉と題し、日本人女性の8人に1人、20代にいたっては5人に1人がBMI値から〈やせすぎ〉とされる現象を特集していました。やせすぎの女性からは低体重の赤ちゃんが生まれる傾向があり、さらにその女性自身が高齢者になったとき要介護になる割合が高いということがわかっているとか。それでもファッションの志向などから女性たちのやせ願望は止まらない……。結果、BMIが標準でも「私、太ってるし」という女性は少なくありません。
スナップページを見て、この傾向は男性にも当てはまるのでは、と感じました。〈やせ=理想〉とするあまり、ふつう/ポチャのボーダーラインがかなり厳しめに設定されていそう。身長167cm、体重63kgの男性(BMI値は約22.5、標準体重より約1.6kgオーバー)までポチャ扱いされているのを見ると、日本人の〈デブ基準〉の厳しさを思い知らされました。
そして迎えた「大人女子がポッチャリメンズとつき合う理由とは?」特集。さてさて、先述のデータのソースはどこに? 目を皿のようにして探しましたが……ない。〈ポッチャリメンズと恋した大人女子5人〉は登場するけれど、まさかこの5人でもって「ポチャメン=意外にモテる!」と結論づけている? それはあまりに乱暴……と、いったん冒頭に戻るとイントロダクションに、「この本を出版するにあたり、いろいろな方たちを独自取材していくと、驚くべきことに30代前半の大人女性たちの半数以上が『ポッチャリメンズがいい』『ポッチャリメンズと結婚OK』といっている」との記述が。あ、根拠ってこれだけですか。
ポチャ雑誌に見られる女性像
そりゃポチャメン向けの雑誌の取材で、「デブってありえない」「私、細マッチョしか受け付けない」と応じる人は、空気を読むのを美徳とする日本人では少ないでしょう。「ポッチャリメンズと結婚OK」と「結婚するならポッチャリメンズ」のあいだにも、かなりの隔たりがあります。しかも、「女性が太っている男性を好きなのは、女性の本能に起因する」など、無理のある記述もちらほら。読者を肯定し、アゲていくのも結構ですが、「俺たちは清潔にしてさえいれば、こんなに素敵な女性たちが受け入れてくれるんだぜ。なぜならデブ=魅力だから!」とまでいくと、もともと太った男性が好きな筆者ですら鼻白みます。
そして、同誌には上記の大人女子5人以外にも、ポチャメン好きを公言する女性タレントが数名登場します。が、出てくる女子はそろいもそろってスレンダー。「ただしイケメンに限る」なんてクソ食らえ、俺たちはこの体型が誇りなんだ! 女性だって受け入れてくれるんだ! といいながら、ここでいう女性=「ただしスレンダー美女に限る」って、モヤモヤしまくり。俺らの体型こそモテ要素! っていうなら、女性における「体型の個性/多様性」にも、もっと目を向けませんか? ポチャメンにそもそも備わっている「大らか」というプラスイメージをみずから損なっているようで、とても残念です。
発売日未定ながら、次号も予定されているようです。男性も女性も体型コンプレックスによって自分が損なわれず、また他人を損ねることもなく、大らかにファッションを愉しめる1冊に進化していることを期待します。
(三浦ゆえ)
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