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「子を産む責任」という女への圧力。「産まない」選択した山口智子、そして小泉今日子の言葉から考える

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 彼女がそこまで「産まない女性」を糾弾する根拠のひとつが、「あなたの老後の世話を誰がみるの?」だ。

『年老いて介護が必要になれば、誰もが他人様の産んだ子供の世話になるはずだ。母親が10か月間、お腹のなかに子供を宿して痛い思いで出産し、大変な苦労をして育ててきた若い子の世話になる。そのことをどう思うか、「子どもいらない」と主張する女性たちに聞いてみたいものだ』

 と、くる。彼女の論調は「子供が親の介護をすることが当然」という前提で成り立つが、実子はいるが介護してもらえない、あるいは介護は実子でなく専門職従事者に頼みたいという高齢者がいることなどは抜け落ちている。しかし彼女はこうした論理をもって、『「子どもを産まない自由」ばかり主張するのは、あまりに浅くて未熟な考えだ。命はつながっているし、これからもつなげる必要がある』と締めくくる。

 金美齢の主張をそのまま読むと、出産と育児をおこなうことで、女性は自由を謳歌できなくなるが、しかしそれを引き受けることが女性の責任、となる。こうした文章を書いておきながら、それでも「女性は抑圧されていない」とし、「圧力を受けなければいけない」というわけだから、びっくりする。ちなみに『AERA』2016年2月8日号の特集は『ひとり好きだけど子どもが欲しい』だった。

産まなくても社会に残せるものがある

 山口智子は「FRaU」誌上で、子を産まない理由として「私は特殊な育ち方をしているので、血の結びつきを全く信用していない」ことをあげている。彼女が栃木の老舗旅館の娘であったことは有名だが、幼少期に母がその家を出て行き、旅館をひとりで切り盛りする祖母に育てられたという。山口も女将として旅館を継ぐことを求められていたのか、同誌インタビューには、「週末もよく宴会の準備や片付けを手伝わされました。友だちと遊ぶ暇があったら家で修業しろ、と」とある。しかし山口は「自分を犠牲にして家業に尽くす祖母の生き方」を反面教師にし、「『家』という宿命に縛られるのではなく、自分自身が後悔しない人生を自分で選び取りたい」と強く願い、家を出て東京でモデルになり、女優としてブレイクし、結婚した。だから彼女は本当に「一片の後悔もない」のかもしれない。自分で選び取った道を歩いてきたのだから。

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ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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