『ゴーストワールド』 テリー・ツワイゴフ監督
公開は2001年。もう15年も前に流行った映画だが、今なお一部の人たち(特に女性)から熱烈な支持を密かに集めているテリー・ツワイゴフ監督作品だ。一体この映画の何が、公開から10年経っても観客の心をつかみ続けているのか、そこには、01年にも16年にも、この世界=現在を生きにくいと息苦しく感じている女性たちの複雑な思いがあるようだ。
原作はアメリカのコミックらしいが、その内容は映像化にあたって大幅に変更されている。
世の中を斜に構えて見ているイーニド(ソーラ・バーチ)と親友のレベッカ(15歳のスカーレット・ヨハンソン)は大嫌いな高校を卒業するも、進学も就職もせず地元でぶらぶらモラトリアムを持てあまし、街で見かけた変な人を尾行してみたり突然髪の毛を緑に染めてみたりの日々を過ごしている。彼女たちの根底にあるのは、「私は周りのバカどもとは違う。もっとおもしろい、特別な人間なの」という、根拠のない自信だけだ。
そんな毎日の中、気まぐれにかけたいたずら電話をきっかけに出会った冴えない中年男性のシーモア(スティーブ・ブシェミ)にシンパシーを感じ、友だちとして距離を縮めていくイーニド。内向的な性格のシーモアは典型的な音楽オタクで、女性には興味もなく、積極的にアダルトグッズショップに入ってはしゃぐイーニドに困惑しきるような、最近で言うところの草食系男性だ。しかし彼の気持ちはお構いなしに、イーニドは「あなたがモテない世界が許せない」と彼にガールフレンドを作ってあげようと躍起になる。自分と同じ匂いのするシーモアという大人が、面白くないはずがない、と。その甲斐あってか、シーモアには無事ガールフレンドができた。