フェミニズム復活の新しい波?
『Paper』誌のエマとフックスの対談が、「Girl Crush」というシリーズ対談の一環として行われたことは既に書いたが、実はその掲載号全体が、「Girls Girls Girls」という女性特集となっている。表紙は、女優・クリエイターのレナ・ダナム。特集名も、彼女が監督・脚本・主演を務めるヒットドラマ『GIRLS/ガールズ』から採られたものだ。
レナは、『エル・ジャポン』2015年2月号で「ネオ・フェミニズム宣言」という特集が組まれた時にも、エマ・ワトソンと並んでインタビューが掲載されていた。今回の『Paper』の特集も、「フェミニズム」を1つのキーワードとする女性特集だ。筆者はまだ読めていない記事も多いが、出てくるテーマや人々は、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)、有色人種の女性たちによるフェミニスト活動家グループ、クィアな(メジャーではないセクシュアリティの)アーティスト/活動家デュオから、ハリウッドの新進女優たちや、IT業界で活躍する女性たち、そして「Girl Crush」の対談に登場する女性たち(ミュージシャン、ラッパー、作家、女優、ファッション・ブロガー、ファッション写真家、家族計画団体の会長)などなど、多岐にわたっている。
エマとフックスの対談でも、記事冒頭に置かれた編集部による導入文の中で、昨今の「女性たちが、フェミニズムについて語り、熱意を持ってフェミニストと自称し始めるという、長年みられることがなかった」動きについて触れられている。そして、このような動きが現れた現在を時が経って振り返ったら、フェミニズム復活のこの新しい波の、ハイライトとなる出来事として、いずれも2014年の、ビヨンセのMTV Video Music Awardでのパフォーマンス(FEMINISTという巨大な文字の前に立ちフェミニストであることを宣言した)、マララ・ユスフザイのノーベル平和賞受賞、そしてエマの国連でのスピーチが挙がるだろう、と述べられているのだ。
もちろん、今の文章が、未来から振り返った時に、というかたちで書かれていたように、フェミニズム復活の新しい波については、そのようなものが本当に存在しているのか、存在しているとしてどのような新しい特徴があるのかなど、その評価はまだ定まってはいないのだろう。
それでも、『Paper』のカルチャー雑誌の一号丸ごと使った特集や、これからも回を重ねていくのだろうエマ・ワトソンのブッククラブのような活動に触れると、女性が様々な事柄について声を上げ、対話する機会を作り出そうという熱を感じるのは確かだ。
(福島淳)
—–
参考リンク
・エマ・ワトソン UN Women 親善大使 国連でのスピーチ (日本語字幕) 演説テキスト邦訳
・『Paper』誌での、エマ・ワトソンとベル・フックスの対談は同誌のサイトでも読めます(英語)
・エマ・ワトソンが始めたフェミスト・ブッククラブ「Our Shared Shlef」のページ(英語)
・「Our Shared Shlef」の始動を取り上げたGuardianの記事(英語)
・本記事執筆後、「Our Shared Shlef」の4月の課題図書が、キャトリン・モラン『How To Be A Woman』となったことを知った。この本については、messyでも連載をされている北村紗衣さんが以前ブログで紹介されていて大変気になっていた本だった。 同書は、本文でも触れた『エル・ジャポン』2015年2月号「ネオ・フェミニズム宣言」でも小さくだが取り上げられていた。
・『Paper』 2016年4月号「Girls Girls Girls」
・本文では触れられなかったが、今回取り上げたような動きに対して、日本語で情熱的な反応されている方々も、もちろんいらっしゃる。今回の記事も、そういう方々からの発信にも刺激を受けて執筆された。SNSを中心にした個々人の方々の発信へリンクすることができないので、代わりに最近「日本でも女の子たちが繋がれるメディアをつくりたいと思い」立ち上げられたというウェブメディアを紹介したい。 http://sister-magazine.com