非正規雇用の増加を止めることはできない
さて、現代の日本で見過ごしてはならないのは、非正規雇用にある人々は転職や失業を繰り返し、場合によってはなかなか仕事が見つからず、不安定な生活を余儀なくされていること、そして非正規と正規の労働条件、賃金などの処遇格差があまりにも大きいことです。その上、社会保障や税制は、男性世帯主を中心とした正規雇用労働者を想定してデザインされているため、非正規雇用労働者が労働者の4割を占めている状況、非婚・未婚・離婚などによる家族構成の変化などに全く対応できていません。日本の非正規雇用者の現状は「非正規雇用」ではなく「不安定雇用」です。
日本でも日経連や経済同友会、少なくない数の政治家が、経済力を高めるために雇用の流動化を進めるべきだと主張しています。しかし、彼らは非正規雇用という「柔軟な働き方」に伴うリスクを労働者に負わせることを前提に議論しています。また、日本の労働組合も男性正規雇用労働者を中心に組織されており、出産・育児・介護といった家庭の事情を抱えながら働くことのできる非正規雇用という働き方の可能性を見据えた議論とはなっていません。
非正規雇用の増加は今後も止めることができないものでしょうし、性別役割分業意識が強い日本では、「家庭の事情」を抱えやすい女性が非正規雇用に就く割合が高い状況を是正するのも難しいでしょう。であるならば、「雇用の流動化」への反対ではなく、オランダの労働組合がしてきたように、社会の再分配、ワークライフバランスを支える仕組みとして非正規雇用・パートタイム労働を捉え直し、非正規雇用労働者が安心して働いていくためにどのような法的な枠組みや企業側の取り組みが必要なのかを考えながら、一番苦しんでいる非正規雇用者のためにこそ強く交渉していくべきだと思います。
【参考】
日本労働組合総連合会
プレカリアートユニオン
独立行政法人労働政策研究・研修機構「第51回労働政策フォーラム 非正規雇用の国際比較―欧米諸国の最近の動向―」
内閣府 男女共同参画白書 平成25年版
厚生労働省 平成26年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況
OECD.Stat