――普通なら購入した物件に住んで賃貸の家賃を払う感覚で、ローンを返済していきますよね。
井原「リフォームしたばかりのときが、運用のチャンスですよ。きれいな部屋でないと、なかなか借り手は見つかりませんから。私の購入した物件は、今の状態なら賃貸価格は15万円が相場です。ですから今のうちに運用し、家賃でローンを返していくつもりです。自分が住むとしても、古くなって借り手が見つからなくなってきたらでいい。私は“元金均等返済”でローン返済しているので、時間が経てば返済額が安くなるんです。しばらく賃貸などで回したあとで移り住めば、自分でもローンを返せる金額になっているはずです」
民泊で稼いで、ローンを返済
“元金均等返済”とは、借り入れた金額を返済年月で均等に割り、そこにローンの利息を上乗せする方式。未返済の残高が減っていくに従い利息額も減っていくので、当初の返済額が一番多く、将来の返済額は少なくなっていきます。毎月の支払額を一定にする“元利均等返済”に比べて、始めの負担は大きくなりますが、総返済額が少なくなるのが利点です。
――家が古くなり、借り手が見つからなくなった頃にはローンの支払いもお手頃になっている。計画どおりに行けば、賢い選択ですね。
井原「購入した部屋に住むものだという、固定観念を捨てました。部屋を借りてもらう人に、ローンの返済を助けてもらうイメージです」
――ということは、今お部屋は他人に貸しているんですね。
井原「私の場合、もっとアグレッシブに運用したかったので、今はAirbnb(エアービアンドビー)のオーナーになっています。1LDKのうち6帖の1室は友人に住んでもらい、12帖のLDK1室をAirbnbに登録して活用しているんです」
――個人の住居を旅行客などに貸すという、話題の民泊ですね! 露骨なことを伺いますが、どれぐらい儲かるものなんでしょうか。
井原「実は思ったほど儲からなくって(笑)。私は12帖に二段ベッドを入れて、シェアタイプにして登録しています。人の入り方を見て調整することはありますが、だいたい1人1泊2500円に設定しています。布団も2組あって、フル稼働すると4人が宿泊するので、最大1晩1万円儲けが出る仕組みです。実は、はじめは1人1泊4000円に設定していたのですが、利用者が少なくて金額を下げざるを得ませんでした。私の物件がある千歳船橋は、住むのにはよい場所なんですが、旅行者には魅力がないみたいです。上野あたりの部屋は回転率も高く、儲けが出ていると聞きますけどね。私はそろそろAirbnbを切り上げて、賃貸に出そうかと考えています。最近住民からのクレームも多くて、民泊がやりづらくなったこともありますし」
――テレビなどの報道を見ると、Airbnbは外国人利用者が引きも切らず、相当な売り上げがあるイメージがあったのですが、全てのケースに当てはまるわけではないと。
井原「宣伝など上手くやればニーズはあると思うんですが、これだけニュースになってしまうと、やりにくいですよ。私に関していえば、マンションの規約にも違反していません。商用で他人を宿泊させると違法になるので、そう見えないように、あえて友人に頼んでAirbnbで貸しているマンションのひと部屋に住んでもらうなど、トラブルを避けるために細心の注意を払っているんです。マンションの規約にも反していませんし、今まで何も問題は起こっていません。私が気にしている法律的な問題も、現状は政府に黙認されているようなので、気にする必要ないかもしれません。でもクレームが怖いんですよね。世田谷のような住宅地では、見慣れない外国人がマンション内を歩いているだけでも警戒する人が多くて……。Airbnbをやるなら人の流動性が高い地域や、オートロックがなく、管理され過ぎていないマンションを選んだ方がいいかもしれません」
Airbnbなどの民泊を商売として継続的に行うことは、今のところ旅館営業法違反。ただ、海外からの旅行者増加による宿泊施設の不足は深刻で、政府は規制を緩和する方針を打ち出しています。具体的には、民泊をカプセルホテルなどと同じ簡易宿泊施設に分類し、いくつかの基準を設ける代わりに合法的に行えるようにするというもの。とはいえ、同じマンションの住民からの反対にあいながらの商売は、確かに難しそう。――そのお話を聞くと、やっぱり不動産運用ってハードルが高いと思ってしまいます。Airbnbにしても、賃貸に出すにしても、相手あってのこと。もしも誰も借り手が見つからなかったら、ローンの支払いがのしかかって来るんですよね。
「私には何も残らない」から不動産購入
井原「確かに住宅を購入したことで、それを運用しなければならないという課題を背負うことにはなります。それでも私が住宅購入に踏み切ったのは、そうしなければ、私には何も残らないと思ったんです。なぜなら、私が女性だから。女性は結婚や出産などライフステージが変わると、仕事を中断しなければならず、途端に肩書きがなくなってしまうことも多い。それでは心許ないですよ」
お仕事柄、井原さんは女性の悩みを聞く機会も多いそう。「離婚したくても、生活力がなくて身動きが取れない」——そんな女性に、もしも不動産を運用する能力があれば救われるのではないかと、井原さんは考えます。