井原「女性が物件を購入して、それを賃貸に出している状態を作っておけば、当座は実質的な支出なく将来に備えることができます。たとえ将来的に分譲した物件に住むことがなくても、家賃収入を得る楽しみがありますし、家族の誰かが使ってもいい。もしも離婚するなどで行き場がないとなれば、それまでキープしてきた分譲物件に住むというセイフティネットができる。自分名義の物件を持つことで、強く生きられると思うんです」
不動産購入はローンの返済期間が長きに渡るので、購入するなら早く返済を始めた方が楽なのは確か。借り手が付く物件を見極めれば、井原さんが計画するようにローンの支払いを家賃収入で賄うことも、可能かもしれません。ただし厳密には住宅ローンを組んで得た物件を賃貸に出すと、賃貸住宅ローンに切り替えるなどの手続きが必要になります。その際は1万円程度の手数料がかかるほか、住宅ローンに比べて金利が高くなる可能性があるとか。実際は多くの人が住宅ローンのまま賃貸に出しているようですが、仕組みを理解し、許容範囲内で運用しないとトラブルになることもあるそうです。
井原「ローンのことや税金のことなど、家を買うと勉強しなければならないことが多いのですが、自分の資産のためだと思えば、やる気も出ます。正直、私が不動産を購入したというと、女友だちから奇異な目で見られることも……。でも私は家賃や、服や、化粧品やらに、何となくお金を使いつづける方が怖い。自分が手に入れた部屋に関して、あれこれ勉強したり苦労したりすることの方が、充実していると感じるんです」
私たちは人生で、一体何を “自分のもの” にできるのか? 井原さんのお話をうかがって、しみじみと考えました。生きているだけで、お金はなくなっていきます。そして仕事も家庭も永遠ではないとしたら、自分の名義の住宅を、と思うのは自然な気持ちの流れなのかもしれません。
ただ自分で住むにしろ、運用するにしろ、不動産を手に入れればそれにともなった課題を背負うことにもなります。それに対応するにはリスクを受け入れる強さと、手間を楽しむエネルギーが必要になるようです。
(蜂谷智子)