男は母を侮辱できない
二村 僕も気持ち悪いおばさん・おじさんどっちも苦手ですし、そうならないようにしたいけど。男はさ、赤の他人であるおばさんの悪口は言えても、自分の母親のことは悪く言えないよね。やっぱりさ、男は母を侮辱することに無意識の禁止がかかっている。女のことはチンポを使って侮辱してるくせに。
林 母親は聖域?
二村 そう。だから今みたいに永子さんから、ご自分の同族嫌悪を含め、自分がああなっちゃいけないという意志も含め、つまり女性が「女の醜さ」を指摘してるのを聞いて、傷ついたりするんですよ。だけど、それも甘いんだよね。だからさ、二村は男には厳しいのに女に優しすぎるよ、みたいなことを言われるんです。
林 優しいですよね。
二村 それは僕が臆病で、ヤリチン気質だからですよ(笑)。優しいのは、嫌われたくないからなんだよね。だからそういう女性のね、女性に対する悪口は、僕も、他の男たちも、それが正当なものであるならば、それを聞いて「女怖い~、僕たち傷ついちゃう~」とか言ってないで、ちゃんと聞いた方がいいしね。
女性は、永子さんはさ、たとえば俺が「権力や社会的な既得権益を使ってインチキ自己肯定してたり、反体制側であっても偉そうにしてるおっさんはキモい」って言うのを聞いて、別に傷つかない?
林 そうですね。
二村 むしろ、言ってくれた方がいいって思ってるのかな。
林 うん、どんどん言ってくれて。
二村 僕は強い女性が大好きで、現実にはペニスを持っていない女性が「男らしく」することは僕は非常にいいことだと思っている。ペニスへのコンプレックスから権力におもねって偉そうになる女はキモいけど。「男であろうとすること」と「男らしくすること」は区別しないといけない。
林 私は女の子らしさとか、女らしさ、が気持ち悪いですよ。とてもとても気持ち悪い。なぜなら……
二村 それが既得権益になってるんだよね、女性にとっての。
林 そういうことです。
二村 男が喜ぶようなふるまいをわざわざして「女であろうとする」ことが、すごくさもしく見えるわけでしょ?
林 そうですね。男性でも、全然立派な人間じゃないくせに威張って男根を振り回すような男には、「お前の男根より私の男根のほうがでかいけど大丈夫か」って。
二村 アナルの話ばっかりして申し訳ないけど、僕は「男はケツを掘られ、女はでかいチンコを持てばいい」と思ってる。でも、女の人がでかいチンコをつけるためには、収入の男女格差の問題とかさ、労働や育児の環境の問題とかさ、色々と変えていかなければならない社会問題が山積みでしょ。
林 すごくよくわかります。
二村 あとね、今日もう時間ないんだけど「変態とは何か」っていう話があって(参照:宮台真司×二村ヒトシ対談/wotopi)。
『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』で僕が言ってることって、そういう部分でも男女がリバーシブルになれば、なんとかなるんじゃないかって提案なんですね。男らしさ女らしさを無くすんじゃなくて、その局面に応じて男女両方が、それぞれ逆サイドも使えるような文化を作れば、という。ただそこで湯山さんとやや食い違ったのは、湯山さんって変態じゃないんだよね。過剰な人だけどリアリストだし変態ではない。「二村さんの言ってることわかるんだけど、でも日本人の男の全員がいきなりアナルが感じるようにはならないよ」と。「女にも、心にチンコがある女と、ない女がいるよ」と。それは全くおっしゃるとおりで、僕の言ってることは極論だし理想論なんです。
じゃあどうすればいいのか。永子さんが『女の解体』に書いていたように、まずは男が牛耳っている世界に女が女のままで入っていって、その中でしかるべき地位を得て、内側から崩す。つまり外側は女のようなふりをしながら、内面に太いペニスを持つ女性が、だが名誉男性にはならず、男の権威に寄り添わずに、それをやる。
でも、それもやっぱり出来る人と出来ない人いるんだよね。俺が、全ての男に「みんなもうケツ掘られちゃおうよ、楽しいよ」って言っても、ついてこれない人がいるように。
林 出来る人からやっていく。