今回と同じような事件としてあげられるのは、上に列挙したタレントたちのそれではなく、たとえば今年2月に起きた九州の予備校生殺人事件だろう。2月27日の21時前、福岡市西区の住宅街路上で、一人暮らしの予備校生が、首や顔、頭など20カ所以上を刺され死亡した。犯行に及んだのは被害者と同じ予備校に通う男で、「好意を告白したが、お付き合いを断られた」ことが動機だったと供述している。2013年10月に東京都三鷹市の女子高校生が、元交際相手の男に殺害された事件もあった。男は復縁を迫り、拒絶されたことで犯行に及んだ。12年11月には、神奈川県逗子市で、女性が元交際相手の男に殺害されるストーカー事件もあった。いずれの事件も、際立つのは加害者の執着心だ。
被害に遭う可能性のある大勢の女性たちに向けた防止法をどれだけ伝えたところで、逃げ切ることが出来るとは思えない。今回の事件についてワイドショーや報道番組が取り上げるならば、「アイドルとファン」の関係性や、被害者がとるべきストーカー防止策についてではなく、「加害者を暴走させないために社会は何が出来るか」という議論をすべきではないだろうか。
(水品佳代)