今回のツイートでも、その後5月22日に
『性の問題は禁止じゃなくて、管理・マネジメントの話。現代的な価値観とルールの中でどう対応するのか。思春期の子どもへの性教育と同じ話。きれいごとばかり言って本気で取り組まない現状への問題提起・炎上手法として風俗活用発言をしたけどちょっとこれは行き過ぎた。』
『現代的な価値観とルールの中で、性の問題をどのように解決していくのか。禁止ばかりじゃ何も解決しない。この問題は禁酒法と同じ。禁止では問題をかえって 悪化させる。どうマネジメントするかだ。ところが米軍も、日本のきれいごと連中も、きれいごとばかり言って、本気で考えようとしない。』
と書き添えています。
このように、橋下さんは「軍と性の問題について、きれいごとではなく取り組んでいくべき」という考えであり、2013年も2016年も『性暴力問題解決のためにあえて「風俗活用」の話題を持ち出したのだ』という主張を展開していることがわかります。
しかし私は、橋下さんが「あえて風俗活用発言をする点」こそが、彼の根源的な問題を示していると考えます。
まず、性暴力の文脈において「風俗利用を提言する」ということは、背景に「風俗利用が性加害の抑止になる」という認識があるということです。なぜ、性風俗利用が性加害の抑止になるのか。「射精してすっきりすれば、性加害欲求はおさまる」と想定しているからです。ここには、「性加害とは性欲由来の暴力だ」という見方があります。
事実、日本の刑事司法においては、取り調べ段階から、容疑者の性的な意図を中心に聞き取りが行われるといいます。つまりは「加害者の<性欲を中心とした動機>の解明」を元に、裁判や事件解釈が進められるということです。★1
男性の性欲が原因で性犯罪事件が起きたとする公的な解釈は、橋下さんが持っているであろう「性欲の健全な解消が性加害を減らす」という発想につながります。さらにその発想は、「女性は男性の性欲を刺激しない行動を心掛けるべき」、「性風俗で働く女性は、性欲の担い手であるから、性欲の暴発を防ぐ。つまり性風俗に行けば性加害も減る」といった、「性暴力を防ぐ担い手は女性である」という意識を生んでもいます。
ところが、性犯罪の加害者研究において、性加害行動は、決して<性欲の暴発>が原因ではないことが明らかになってきています。牧野雅子『刑事司法とジェンダー』(インパクト出版会)、鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』(幻冬舎新書)などに詳しいですが、加害者は性欲の解消そのものよりも、反社会的な行為への執着や、弱者へ暴力を振るうことで自意識を満たすこと、被害者への共感性の欠如から犯行を重ねていくことなどが分かっています。また今回逮捕されたシンザト容疑者に関しても、突発的な行動ではなく、計画的な犯行の可能性があるとして容疑が追及されています。つまり「性風俗活用を提言したとしても、性加害自体は減らず、被害者が替わるだけ」という可能性が高いのです。