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男はなぜ枡野浩一の言葉に苛立ちを感じるのか? あぶり出される「嫉妬と脅威」

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枡野浩一

枡野浩一『愛のことはもう仕方ない』発売中

エゴサーチしまくる著名人・枡野浩一について書く恐怖

 私はこれから書評のような原稿を書くわけですが、今とても緊張しています。もっと言うと、ただならぬ怯えを感じています。何を書いていいかわからず、ここ数日間、原稿がちっとも進みません。

 この本は、歌人の枡野浩一さんが当サイトで半年間にわたって連載していた小説『神様がくれたインポ』をまとめたものです。1回あたり7〜10ページ(大体4000文字)、週刊連載で24回、それに書き下ろしを加えた全25本の文章で構成されています。実在の人物や時事ネタなども数多く登場し、エッセイのようにも身辺雑記のようにも見えるテキストですが、枡野さんは初回の冒頭で〈これから書く文章は小説だということにしたいと私は強く思いました〉と宣言しています。

 なぜ緊張しているのかというと、枡野さんには〈人並み外れた「エゴサーチ欲」〉があり、〈自分の名前で検索するのが日課〉だというからです。私は人々の恋バナを聞き集め、それをもとにコラムを書いている無名の書き手に過ぎませんが、これは他ならぬmessyに書いている原稿であり、さすがに枡野さんの目にも触れることになるでしょう。

 自分の読みが浅く、枡野さんを憤慨させてしまったらどうしよう。ていうか、それ以前に箸にも棒にもかからなかったらどうしよう。俺みたいなものがここでどんな評を書いたところで、枡野さんからしてみれば「ああ、それか」と既視感たっぷりなものかもしれない。また心の底には「著者に認められたい」という下心があり、それも透け透けにバレてるような気がする──。

 そんな自意識に囚われ、ずっと書いては消してを繰り返してきました。Deleteした文字数を合計したら、もはや原稿1本分の量になっているような気もします。しかし、それでも何とかこうして書き進めることができているのは、他ならぬ本書に思いっきり感化されたからです。

 それは、「正直さ」への憧れです。

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio

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愛のことはもう仕方ない