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高校生のセックスは不道徳で、妊娠は罪か。教育者が行うべきは、子供に罰を下すことなのか?

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必要なのは罰ではない

前述の男子高校生のケースでは、「高校生の分際でセックスしたお前は罰せられるべきだ」という学校側の態度がありありと見えます。

そもそも、「高校生のセックス」は禁忌なのでしょうか? あってはいけないことなのでしょうか?

今回のケースは両方とも対象は高校3年生、18歳の生徒でした。肉体的には十分に成熟しており、結婚もできる年齢であり、今年からは選挙権も与えられる、それが18歳です。精神的にも肉体的にも、大人として認められ、個人の決定が尊重されてしかるべき年齢なのです。

一番の問題は「高校生がセックスなんてありえない」という偏見によって、未来ある若者の将来をつぶすような罰を下したことです。

東京都の調査によれば、高校生男子の6割弱、女子の4割強が、自分自身が性交することについて、「愛情が深まれば可」「機会があれば可」「お互いが納得すれば可」など、許容的見解を示しています。そして、実際に性交経験がある生徒も08年度で3割、14年度で2割程度います。首都圏の高校生の半分は「セックスをしてみたい。してみてもいい」と思っていて、実際に経験している生徒も2割から3割はいるのですから、「高校生はセックスをしない」ことを前提にするのは、そもそも間違っているのです。

若ければ若いほど、必要な知識が不足していることなどによって避妊や性病予防に失敗する確率は高まります。「高校生はセックスをしない」という前提に立っていたら、不慮の妊娠や性病に罹患したとき、怒られること、罰されることを恐れて、親や教師に相談するタイミングを逸してしまいます。選択肢が無くなってしまうことはもちろん、最悪の場合には命さえ落としかねません。必要なことはセックスをしたことを罰するのではなく、その後に必要なケアを手厚くすること、そして望まない妊娠や性病にかからないように、正しい知識を与えるための性教育を充実させていくことです。

性をタブー視する社会

前回の記事でAV強制出演の件を取り上げましたが、メディアも弁護団の訴え方も根底には「セックスはいけないこと、けしからんこと」という考えがあるように思われます。AV業界の環境改善や女優・男優の地位向上ではなく、AV出演を「公衆道徳上有害な業務」と位置付けることで「セックスをすること」そのものを有害であると位置付けるような訴え方をしているからです。

高校生の性の問題にしても、AV強制出演にしても、セックスをタブーとする前提に立ってしまうと、もっと多様で深みのある議論の可能性を閉じてしまいます。何より、そうした性の問題が絡んでいる状況で、困った状況に陥ったとき、彼ら彼女らが助けを求めることが非常に困難になります。高校生のくせにセックスなんかするからだ、セックスを商売道具にするからだ、自業自得じゃないか、というような意見は、すべてその根底にある「セックスはいけないこと」という考えの発露です。

人間はセックスをするように造られているし、実際、ほとんどの人はセックスなくしてはこの世に生も受けていないでしょう。人の性を語ることは、生を語ることです。私たちはもっと性について快楽の視点からだけでなく、教育的な視点も含めてよりオープンに語るべきです。

参考資料
東京都幼・小・中・高・心性教育研究会、2014年12月「児童・生徒の性に関する調査」現代性教育研究ジャーナル45号
U.S. Department of Education, 2013, “Supporting the Academic Success of Pregnant and Parenting Students – Under Title IX of the Education Amendments of 1972”
交際相手と性的行為「退学勧告は違法」と提訴
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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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