他党に比べて女性比率が飛びぬけて高い共産党
次に、日本共産党の女性候補を紹介していきます。
日本共産党のウェブサイトでは「比例代表」「県単位」という二種類の比例候補者がいてよくわからなかったので、メールで質問をしてみました。すると非常に丁寧な回答が返ってきました。
日本共産党の回答によれば、統一が実現した多くの選挙区では、それまで活動していた共産党の予定候補者が立候補を取り下げましたが、各区の予定候補者たちの希望があれば、選挙活動の地域を県単位とした上で、比例代表候補として出馬できるようにしたとのことです。
この候補者たちも含めた場合、日本共産党の比例候補者は42人でそのうち女性が13人なので、女性比率は30%です。一方、いわゆる全国区をターゲットにした比例候補は9人でそのうち女性が4人なので、事実上の女性比率は44%ということになります。いずれにしても、日本共産党は他の党と比べて、飛び抜けて女性比率が高いと言えます。
13人全員を紹介するのは大変なので、全国区の比例候補9人のうちの女性候補4人を紹介していきたいと思います。
田村智子
学生時代に学費値上げ反対運動に参加したことをきっかけに民生同盟に参加し、卒業後に日本共産党入党、というバリバリの共産党議員です。参議院、衆議院と何度も挑戦してきましたが落選し続け、2007年に比例代表として参議院初当選となりました。政策としては、戦争法・安保反対、学費負担の軽減と奨学金の充実、保育所の充実、医療・介護の充実、非正規雇用から正規雇用への切り替え、労働における男女不平等の是正、反原発をかかげています。あまりにも色々な問題に手を広げていますが、国会で議員ができることには限りがあります。リベラル政策の総合商社ではなく、自身が確実に成果をあげたいものが何なのか、それを明確にしていってほしいように思います。
いわぶち友
ネットを探してみても、過去に落選したことのある人だということ以外、何も出てこない候補です。一番の問題は、彼女の公式ウェブサイトはブログ形式となっており、具体的な政策が紹介されていないことです。トップページには「戦争も原発もない社会を子どもたちに」というメッセージは書かれていますが、ネットがこれだけ発達したご時世に、本人の公式サイト上はおろか、Twitter、Facebook、Youtubeのどこにも具体的な政策目標を掲げていないのは、極めて不親切かつ、政策で勝負することをはなから諦めているようにも見えます 。反安保法案、反原発の2点に集中しようという心構えなのかもしれませんが、全国の有権者にとってより優先順位の高い社会政策について本人の考えが全く示されていないので「全国区で国民のために戦う」という意気込みを全く感じません。自分の演説を生で聞いてくれる人にだけ自分の声が届けば、あとは「日本共産党」の名前で当選させてもらえばいいや、ということなのでしょうか。
奥田智子
彼女の公式サイトのトップは反戦争法案、反原発の2点が強調されていますが、ページの下には、具体的な政策についても書かれており、反TPP、最低賃金アップ、保育や教育の充実、無償化などについて訴えています。ただ、気になるのは彼女の反TPPの議論です。TPPによってもたらされる環境、労働、社会保障などに関するネガティブ面はあちこちでも議論されているので、反TPPを掲げること自体はおかしいことではありませんが、「農業つぶし」とひとくくりにしてしまっている点が問題です。これでは自民党内で農協をバックにTPP反対を言っている人たちと変わりません。どうせ反 TPPを論じるなら、もっと勉強して本気で自民党内の新自由主義派と戦ってほしいものです。
伊勢田良子
伊勢田氏は日本民主青年同盟を経て日本共産党入党というバリバリの共産党議員です。日本共産党の比例代表は、個人の政策目標というものを持たないのかもしれません。彼女個人のウェブサイトでは具体的政策はおろか、「政策」というボタンをクリックすると、日本共産党の政策サイトに転送されます。個人としてどのような政策目標を日本という国に対して持っているのかというのは、たとえ比例区であっても重要です。それがどんなに拙いものであっても、 自分の言葉で語ろうとしない人よりも、よほど勇気のあるものです。
候補者は自分の言葉で政治を語れているのか
さて、ここまで見てきた候補者は、いずれもリベラル左派と位置づけられるであろう政策目標を掲げています。具体的な目標を掲げている人もいれば、抽象的な人も、自分の言葉ではなく党が発表しているものをコピーしているだけの人もいます。民進党、日本共産党の候補者の中でも、誰が自分の言葉で政策を語っていて、誰が語っていないのかは、有権者がちゃんと見ようと思えば明らかになるものです。
私は、自分自身の言葉で政策について語れる人でなければ、私たちの言葉を代弁できる人、信頼できる人だとは思いません。政党の名前に頼るのは選挙対策上の戦略かもしれませんが、有権者としては、その候補者がどんな人物で、どんな政策を掲げているのか十分に理解した上で投票すべきだと思います。
選挙直前の掲載ではありますが、前回と今回の記事が、読者の皆様の投票を考える上で、少しでも助けになれば幸いです。