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月経血は「きれい」なのか? 透明化した生理と、女性の生きづらさの関係/『生理用品の社会史』田中ひかる氏インタビュー後篇

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 こうした業者は、使い捨てナプキンに対する不安を煽りに煽る。

田中「大手の生理用品メーカーが使い捨てナプキンの安全性を証明すればいいはずなのですが、メーカーからすれば、布ナプキン業者は規模が小さいところばかりでシェア脅かされるほどではない……つまり相手にしていないんです。でも、その安全性をメーカーが発信することは、決して無意味ではないはず。生理用品メーカーが加盟している日本衛生材料工業連合会のHPでは使い捨てナプキンの安全性が実証されていますが、さらに進めて、各メーカーがパッケージに安全性について明記すれば、なんとなく不安を感じている人たちも安心できるのではないでしょうか」

 経血コントロールに話を移そう。『生理用品の社会史』には、女性たちが長らく経血の処理に腐心してきた歴史がつづられている。アンネ社が使い捨てナプキンを発売するまで、装着も処理も手軽な生理用品は存在しなかった。ゆえに女性たちの社会進出がままならなかったのは、前篇でお話いただいたとおり。経血コントロールを推し進める人たちがいう「昔の女性はできていた」例はほとんど見当たらないと田中さんはいう。

田中「いまのような生理用品がなかった時代、女性たちが“粗相”を恐れ、経血が流れ出ないよう意識していたということは考えられます。実際、昔は食生活が違ったので、経血もサラサラしていました。でも現代人は動物性タンパク質を多く摂るようになったため、経血が濃くなっていますから、じっとしていられるときはなんとかなっても、動いているときも経血を溜めつづけるのは、むずかしいと思います」

トンデモ言説がはびこる背景

「布ナプキンで子宮を健康に」「おまたぢからで、経血をコントール」など実態のないものに惹かれる女性がいるのは、いったいなぜなのだろう?

田中「昔に比べ、女性の人生の選択肢が増えたことで、かえって生きづらさを感じてしまう女性たちがいます。生きづらさを克服しよう、自分を磨こうと考えたとき、真面目で素直な女性ほど、『子宮を大事にすればいい』『古きよき習慣を身につけよう』という声に感化されてしまうのではないでしょうか。自分の身体に目を向けることは大事ですが、同時に客観的な判断力を持つことが必要です」

 女性たちは、生理を神秘的な現象としてではなく、みずからの身体に必然としてある生理現象として捉え直す必要があるのではないか。

田中「生理を不浄視するのも神秘化するのも、紙一重です。アンネナプキンが発売されたころは、バスや電車の床に経血がついた脱脂綿が落ちていたり、着物の後ろに血が染みだした女性がめずらしくなかったり、それは女性にとって快適な状態ではありませんが、生理が現実的な現象として誰の目にも見えていました。でも、いまはナプキンが高性能化したことによって、そんな失敗はほとんどなくなり、生理が透明化してしまったんです。目に見えないものは、ないことになります。みんなが生理という生々しい現象を共有できなくなったからこそ、不確かな言説が広まりやすいのかもしれませんね」

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』『私、いつまで産めますか?~卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存~』(WAVE出版)などの編集協力を担当。著書に『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

twitter:@MiuraYue

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪――女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)など。

田中ひかるのウェブサイト

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