「みんな寛容って言ってくれるけど、元夫はそう思ってないと思います」(紫原)
枡野 それがついに今度、本を出されたという……。本はずっと読ませていただいて。それで僕は、自分の本がなんにも実用性がない本なんですね。
紫原 そんなことはないと思いますよ(笑)。
枡野 でも『家族無計画』はとにかく読むと元気になるように書かれていて。今日もさっきAmazonレビューを見たら僕の本はゼロ件で、紫原さんには2~3件満点がついていて。
紫原 あはは。ありがたい。
枡野 “誰も敵にしたくないです”とか(の紫原さんの文章態度すごい)。あの、自分は(まわりを)敵にばっかしてるから……。痛いレビューを読みましたよ。
紫原 でも私は枡野さんの本を拝読して、すごく悪意あるコメントというか中傷的コメントも「そうじゃないですよ」って丁寧に返信されてるところに優しさを感じたというか……。
枡野 それを優しさと感じる人は優しい人なんですよ。それをヤな奴と思う人はヤな奴なんですよ。
紫原 あはは。それで、枡野さんと最初に会ったのは田中開くんっていう田中小実昌さん[注]のお孫さんと枡野さんがトークイベントをされたときでしたよね。
枡野 田中小実昌さんっていう直木賞作家がいて、その娘さんが田中りえさん[注]っていって、僕、その人大好きなんですよ、結婚したいくらい好きで。その息子さんが田中開くん。
紫原 その開くんはうちの子どもの数学の家庭教師をやってくれていたんです。
枡野 そうなんですか。
紫原 そういうご縁があって……。それでトークイベントのとき、枡野さんがとても落ち込んでおられて。
枡野 僕、いつでも落ち込んでいるんです。
紫原 いつも風邪をひいていて、いつも落ち込んでらっしゃるというか……。
枡野 今日は風邪が治っているのでよかったです。
紫原 口数が少ない印象で、けっこう暗い方なんだなっていう……。
枡野 暗いんですけど。
紫原 けどこれ(『愛のことはもう仕方ない』)を拝読して、なんか暗いけど、ひょうきんな方なのかなって(笑)。
枡野 そういう風に思ってくださる方はいい人なんですよ。
紫原 あははは。
枡野 僕の結婚相手だった人は、僕がね、愚痴を面白い話のつもりで話すんですよ。「こんなことがあったんだよ」って……そうしたらそれを“この人(枡野)は愚痴ばっかり言ってる”って……。それを本人に言ってくれればいいのに、まわり(の人にだけ)には言ってたらしいんですよ。漫画家だったんですよ、別れた奥さん。
紫原 あははは。
枡野 自分の喋り方が全然伝わってなかったんだっていうショックがありましたね。
紫原 ただ、そっち(奥さんが捉えた枡野さん)が本当かもしれないっていうか……。パートナーには他に見せないとこ見せるじゃないですか?
枡野 う~~ん、どうでしょうねえ……。
紫原 たとえば私のことをすごく寛容って言ってくれる人、多いんですけど。でも元夫はそうは思ってないと思います、絶対。
枡野 そうか! 僕ね、きっとね、あんまりそこで区別がないことがダメだったと思う。
紫原 ああ……。
枡野 つまり、妻だった人にも他の人にも、全部同じ態度で接してしまうんですよ。
紫原 あ~~!
枡野 愛って、えこひいきじゃないですか?
紫原 そうですよね。
枡野 それが自分にはないんですよ、ちょっと。