「ストレートの男性はみんな自分がゲイにモテると思ってるけど、大きな勘違い」(枡野)
枡野 紫原さんって、離婚後は恋愛とかありました?
紫原 私は……あったりなかったりですかねえ。
枡野 そうですか。僕は新宿2丁目に通い続けてましたよ。
紫原 ああ、私は2丁目というのは1回行ったかなぁ。キャバクラには何回かあるんですけど。2丁目のあの文化はよくわからなくて……。2丁目の話をしてください。どういうところなんですか?
枡野 2丁目はねえ、女性には厳しいかも。僕が2丁目に初めて行ったときって、上から下まで(自分の身体を)見られるんですよ。それがすごいびっくりしました。女性は(いつも)そういう目にあってるのかなって、逆に思いましたね。値踏みされるの。
紫原 あ~。自分の性愛の対象としてどうかって。
枡野 そう。そして初めて行ったゲイバーが太った人しかモテないバーだったんですよ。
紫原 あはは。
枡野 僕、それを知らずに、友達に連れてかれて行ったから、本当に空気みたいに冷たくされてて。それであるとき、僕と同じくらい細い、あるイケメンの人が、「なんで来てんの? 痩せてんのに」「ここは太った人しかモテない店なんですよ」って。その人は太った人が好きだったのね。それでその教えてくれた人が他のいろんな店に連れて行ってくれるようになって、ああ、僕はダマされてたんだと。
紫原 セグメント化されてるんですか?
枡野 そう。そして太った人がモテるの、2丁目は。ただの太った人でもね、ドラえもんが道具でダマしたみたいにモテてるの。
紫原 くくく……。ドラえもんが道具でダマしてるかのような(笑)。
枡野 ほんと。だって普通の世界だったら、ただのデブで馬鹿にされるような人が、太ってると包容力があるみたいで、すっごくモテるの! えばってるの、デブが!
紫原 へ~え。
枡野 ごめんなさいね、もし(この会場に)デブの人がいたら。だから僕みたいな中途半端が一番モテなくて。体育会系みたいな筋肉質の人もモテるし……。
紫原 ガチムチみたいな?
枡野 そう。あとはおすもうさんみたいなデブもモテるし。むちゃくちゃ美少年みたいな人もちょっとは需要あるんですけど。でもキムタクみたいな女性顔はあまり人気なくて。亀田の父とかが人気ありましたね。
紫原 えっ、亀田の父? どうして? ガチムチだからですか!?
枡野 や、バカっぽいところが可愛いらしいですよ。
紫原 可愛い?
枡野 世間的には亀田の父とか馬鹿にされてるでしょ? なんか息子へのメッセージもテレビのアニメからパクったとか言われてるじゃないですか。でも2丁目では「そこがカワイイのよぉ~」って言われる。
会場 (へえ~~っ)
紫原 女性でも行く人いるじゃないですか? 何しに行くんですか?
枡野 ああ。でも僕のいまよくいっているのは(作家の)伏見憲明さんがやってる「ミックスバー」[注]で、男女の客がいて。なかでも僕がよくいくのは、腐女子のマキさんが(カウンターに立って)いる日で。なんか優しいんですよね……。あぁ、でもゲイの人の一部は、いじわるかぁ……。
紫原 女性がオーナーの店もあるんですか?
枡野 その日はたまたまで。だからけっこうカップルとかできるみたいですよ。2丁目にわざわざきてる男女って、ちょっと気が合って、交際したりすることもあるみたいです。あとストレートの男性はみんな自分がゲイにモテると思ってるから。それは実は大きな勘違いなんです。
紫原 「そういう目で見ないでくれ」とか言ってる男はモテなくて……。
枡野 そう。そういう人は全然モテなくて、おすもうさんみたいな人が実はモテたりとか。
紫原 ふ~ん。
枡野 あと僕、(普通の男女関係では)すごくモテないだろうけど2丁目ではモテるだろうって男の人は、連れていってあげたくなりますね。
紫原 その人にモテを味わわせてあげたい?
枡野 ドラえもんの魔法の世界を味わってほしくて。
紫原 そんなに魔法なんですね(笑)。
枡野 はい。だってびっくりしましたもん。だって僕を最初に2丁目の太った男性ばかりがモテるバーに連れてってくれた男性は、なんか僕のことをちょっと好きだったような雰囲気だったんだけど、じつはライター志望だったのね。ほんとに僕の顔が好きとかだったら、うれしかったんだけど。デートはしたものの、あんまり深い関係になりませんでした。その子とかは僕から見たら、なんかずんぐりしてるんだけど、2丁目界では、ものすっごくモテるの。
紫原 なんかそういう話を聞くと、普通の女子で「恋愛苦手」とか「結婚苦手」って言ってる女の子よりも……そういう女の子って「ここに行けば絶対自分はモテる!」っていう場所を持ってないじゃないですか。それに比べれば……。
枡野 (新宿2丁目では)ゲイの人は性的強者だよ!(僕の知人は)数もねえ、ストレート男性の何倍もしてるもん。1000人はしてるもん。
紫原 それはもう、「今日ヤリたいな」って思って、そこに行けば絶対出会えるみたいな?
枡野 僕と同い年の友人なんてね、“タチ”っていって、男性役をやれる人が貴重なんだけど、タチなのね。それでタチしかしたことのない人を“バリタチ”っていうんだけど、そのバリタチの彼は、僕と飲むときの前もしてきて、これからもしにいくって言ってて、毎日電話がかかってくるんだって。頼まれてヤるみたいなのが日課らしくて。
紫原 へ~え~! すごいお盛んですね!
枡野 僕と同い年ですよ!? だから、もう、びっくりしちゃいますね。
紫原 そういう中でゲイのカップルになる人たちはいるわけですよね?
枡野 ときどき恋愛相談をされるんだけど。それは「大好きな人がいて、セックスもしてるんだけど、むこうは自分のことをセックスフレンドとしか思っていない」っていう悩みをよく聞く。
紫原 はぁ~。やっぱりセックスフレンドを探しにいく人のほうが多いんですかね?
枡野 たぶん……。だけどねえ、セックスしてればいいじゃないかって思いませんかあ?
紫原 そうです……や、う~ん、人によるかな。
枡野 自分のことを大事にしてくれないのが不満だっていうんですよ。
紫原 セックスフレンドが欲しい人と、大事にしてくれるパートナーが欲しい人と、両方いるかもしれない。
枡野 同じ人でまかなうのは無理ですよね……。
紫原 まぁ、そうですね。最終的に無理になるかもしれないけど……。