社会

性犯罪はなぜ起こる? 加害者性・攻撃性は男性全般に共通するパーソナリティだ/「性犯罪は男性の問題である」対談・前篇

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 普通の男性が性犯罪者になるきっかけはあるのだろうか。

小澤「映画では直接的に描いていませんが、トシオは厳格な父親のもとに育っています。父親が絶対的な存在で、母と子はただ従うだけ。価値観の根源にそんな男性観、女性観があるので、彼にとって女性は“男性を満たすべき存在”です。なのに彼の現在の家庭では、妻が上に立ち自分はバカにされているので、不満が溜まっていく一方……。そうなると、自分が優位に立てるものがほしくなる。彼の場合はそれが、娘だったんです」

斉藤「バックグラウンドが違うのできっかけも人それぞれですが、ひとつ共通していえるのは、性犯罪者の多くは人間関係やストレスへの対処の仕方に問題を抱えているということ。生活環境のなかで得たい注目を得られていない、人間関係のなかでの葛藤や欲求不満があり、そのストレスへの対処行動が適切に選択できない、などです。誰だって多かれ少なかれそういう悩みはありますよね。私たちはそれに対して人に相談するとか、スポーツやカラオケなどの趣味で発散するとかで対処しますが、それが性的逸脱行動であるという人たちがいるのです」

小澤「最も身近な人間関係である“家庭”は、社会の縮図でもありますよね。トシオが育った家庭に限らず、日本全体がいまだ男性上位。そうした社会のひずみのようなものが、性犯罪となって表れているように見えます。それでも社会や経済の変化によっていろんなことが変わってきているのに、それに対応できない男性の一部が、極端な行動に出て女性を傷つけているのではないでしょうか」

すべての男性は加害者性を持っている

斉藤「そうですね、監督がおっしゃった“価値観の踏襲”は、性犯罪者の理解に不可欠なキーワードです。私は性犯罪加害者やDV加害者の更生プログラムに携わりながら、なぜ彼らは弱い人に対して(性)暴力をふるい続けるのか、女性の尊厳を奪うような犯罪をくり返すのかを考えてきました。それによって、弱いものをいじめたり支配することで心の安定を得るというパーソナリティは男性全般に共通する要素ではないかと少しづつ認識するようになりました」

小澤「そこまで、言い切っちゃいますか!?」

斉藤「はい、この際言い切りたいと思います。“加害行為=男性共通の問題”です。戦争するのは主に男性、DVも性犯罪も基本的には男性側の問題です。ほとんどの男性はこのような側面に気づきながらも自分をうまくコントロールし、社会に適応しています。が、男尊女卑の価値観を社会や親世代から踏襲し、それを必要な価値観だと信じて反復的に学習して、みずから内面化してしまっている人は、その加害者性にすら気づかないんです。ゆえに、さまざまな場面で女性差別などの反応が現れ、DV、性犯罪といった社会不適応な行動に出るのだと考えています。

もちろん、加害者性や攻撃性は、男性である私自身のなかにもあります。私はそれを認めないと、彼らのグループセッションに入っていけません。自らの加害者性の承認が重要で、それを言語化することから変化が始まるのは、加害者臨床の醍醐味といえます。……でもこの考え、反発する男性が多いかもしれませんね」

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