社会

性犯罪はなぜ起こる? 加害者性・攻撃性は男性全般に共通するパーソナリティだ/「性犯罪は男性の問題である」対談・前篇

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小澤「僕はよくわかります。程度の差こそあれ、男性は加害者性、攻撃性を先天的に持っていますよね。それは動物として遺伝子に組み込まれたものかもしれませんが。トシオや高畑裕太氏を自分とは別次元のモンスターだとみなす人は、自分の加害性にも無自覚なのでは。自身にもある加害性、攻撃性を認められる人ほど、性犯罪も身近なものとして客観的にとらえていそうです」

斉藤「私は『月光』を見て、自分のなかにいる“トシオ”に気がつきました。性虐待や性犯罪に共感するという意味ではなく、スクリーンをとおして伝わってくる彼の言動や情緒の動きに、心が無意識に反応する瞬間が何度もあったんです。自分はあんなひどい犯罪者と違う! と拒絶するのではなく、自己のなかにもそういう存在がいて、それを自覚しながら生きていくこと自体が、彼らにとってはセルフコントロールを維持し逸脱しないためのひとつの大きなストッパーになると感じました」

男性たちにとっての「トシオ」

小澤「男性がトシオをどう観るかは、人によって大きく違うでしょうね。劇場から出てくる男性たちの表情を見ていると、年配の方は総じて渋い顔をされています。若い人は『考えさせられました』など声をかけてくれるんですけどね。それは世代間の違いなのか、個々のパーソナリティの違いなのかはわかりませんが」

斉藤「男性は自身の加害者性を言語化する方法を知らなくて、年齢が上になるほどその傾向が顕著だからだと思います。ましてや、みずからの性の問題などもってのほかです。私は先ほど『自分のなかにもトシオがいる』と話しましたが、これはとても勇気のいることでした。日本社会のなかで、男性は自分の感情や心の動きを言語化すること自体を求められてこなかったし、逆にできなくても生きていけます。一方で、性犯罪やDVの加害者、依存症の方たちにとって“正直に言葉にすることで、少しづつ生き方が変わっていく”のはよくある現象です。たとえば、彼らは衝動的に行動を起こすことが多いですが、衝動性と言語化は対局にあるものです。言葉にすることで自身の衝動性に気づき、きょう一日再犯しない生活を送る。これをくり返し実践してこそ、回復や更生に向かいます」

 お気づきだろうか、この対談において“性欲”という語は一度も出てこない。性犯罪は性欲の問題ではなく、男性のなかにそもそもある攻撃性、加害者性や男性社会のゆがみによるものだと両氏は語る。高畑裕太の母、高畑淳子の会見ではしきりに性欲について問う場面があったが、性犯罪と性欲を短絡的につなげてしまうと、今回の事件のみならず性犯罪の背景にあるものが見えなくなることに、私たちもそろそろ気づくべきではないか。両氏の対談は、後篇につづく。

▼対談後篇:性犯罪者が犯行時に目の前の現実をどう捉え、何を考えていたかを知る

 information

映画『月光』は、横浜「シネマ ジャック&ベティにて」10月1日(土)~、水戸「CINEMA VOICE」にて10月10日(月)~上映予定。その他の劇場情報についてはHPを参照。http://gekko-movie.com/

 (構成・写真=編集部)

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