社会

性犯罪者が犯行時に目の前の現実をどう捉え、何を考えていたかを知る/「性犯罪は男性の問題である」対談・後篇

【この記事のキーワード】

 そして示談になったことで、事件の内容は被害者本人が何らかの方法で公表しないかぎり一切表に出てこないことになる。

小澤「そうなるとこの一件も単なる芸能ゴシップとして消費され、そのまま風化しますよね。高畑裕太氏に関するこれまでの報道を見ていて僕は、被害者への想像力が圧倒的に欠如していると感じました。その苦しみに触れない一方で、テレビでよく見る“芸能人親子”には親近感があるからそちらばかりを採りあげる。被害者も、それを見ているかもしれないサバイバー女性たちも、完全に置き去りにされています。『月光』の性被害者、カオリのような存在は全国にいっぱいいるのに」

SexualOffense_B03

『月光』の性被害者、カオリ。©2016 『月光』 製作委員会

斉藤「被害者にフォーカスした報道はほとんどありませんでしたね。今回の当事者についてあれこれ報道するのは配慮に欠けますが、被害者を支援している団体に被害の実態を訊くなどの方法があるはずで、それはまだ声を上げられていない人たちへの『相談する場所がある』というメッセージにもなり得ますが、私の知るかぎりではそういうアプローチはテレビや雑誌においてはほとんど見られませんでした」

小澤「取材といえば、『月光』について取材に来てくれたのはすべて女性の記者さんたちでした。男性はひとりもいなかった」

斉藤「そうなんですよ、私に性犯罪について取材に来るのも、いつも女性向け媒体の方々です。メディアにいる男性にとって性犯罪は“自分たちの問題”ではないのですね。高畑裕太氏についてはテレビや雑誌などから取材の申し込みがありましたが、“性欲の強さと性犯罪の関連性”といったピントのずれた内容だったのでお断りしました」

性犯罪を「点」でなく「線」で見る

小澤「加害者を報道するにしても、僕が知りたいのはその背景です。彼だって、映画の撮影中にそんなことをすればどうなるのかはわかっていたはず。それでも一線を超えてしまうほどに、彼は何らかの葛藤やストレスを抱えていたのか。“加害”というものを社会が理解するためには、その検証が必要だと思います」

斉藤「たしかに。そして、彼らの“認知の歪み”にも、もっと迫らなければいけませんね。性犯罪者の多くにこれが見られるわけですから」

 斉藤氏は、“認知の歪み=性的嗜癖行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み”と定義している。

斉藤「仮に高畑氏の事件に関して実際に報道内容が正しかった場合、彼は歯ブラシを口実に自分で呼んだとはいえ『自分の部屋に入ってきたんだから多少成りゆきで触ってもいいだろう』『有名人の俺とセックスできて相手はうれしいはずだ』など、その瞬間には、必ず目の前で起きていることを自分にとって都合のいいふうに意味変換し、それが正しいと理解しています。だからこそ、行動化できるはずなんです。実際、釈放に際して高畑氏側の弁護士が発表したコメントに『高畑裕太さんの方では合意があるものと思っていた可能性が高い』とありますよね。その瞬間に高畑氏が何を考えどう現実を捉えていたのか……これを知ることは、今後、私たちが性犯罪の問題を理解していくうえでとても重要です」

小澤「『月光』で性犯罪と性虐待の加害者として登場するトシオも、女性が自分の車に乗ってくれた時点で、何かしらの合意があった、少なくとも相手は拒否していないという、認知の歪みがあったのかもしれません」

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

性犯罪被害にあうということ (朝日文庫)