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女子の鮮烈な欲望まみれだった少女漫画とレズビアン偏見の罪/椎名あゆみ『あなたとスキャンダル』

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あなたとスキャンダル

『あなたとスキャンダル』1巻

 椎名あゆみの代表作といえば、大人っぽい小学6年美少女と長身中学生男子の恋を描いた『ベイビィ☆LOVE』(1995~1998年)であるが、今回はあえてその前作にあたる『あなたとスキャンダル』(1993~1995年)について取り上げたい。高校生バンドの世界を描いた『あなスキャ』は、タイトル通りスキャンダラスなエピソードが次から次へと巻き起こり、臨場感あふれるシーンも多く、いちいち興奮させられて目が離せなくて、また登場人物たちの性格や行動が比較的ストレートでわかりやすいので、小学校低学年の女児にも読みやすい作品だった。スピーディーな展開とドリーミーな設定が魅力の『あなスキャ』、個人的には『カノジョは嘘を愛しすぎてる』みたいに実写映画にすればよかったのに!と思ってしまう。いや、キャスティングがまず難しすぎるか……。

 主人公は、ミーハーな女子高生・高崎友香(たかさき・ともか)15歳。お嬢様学校として知られる星蘭女子高校に通う1年生だが、友香を含む生徒たちの実態は、言葉遣いも汚い“お下品なお嬢様たち”。となりには金持ちの子息が通う星条男子高校があり、両校は合同で高校生とは思えないリッチなパーティーを開くなど、交流が盛んだが、友香はそもそも男嫌いで、となりの男子高は「お高くとまった気取った奴らが多い」と、良い印象を持っていない。友香が恋い焦がれているのは週に一度、ピアノのレッスンに向かう電車の中で見かける名前も知らない長身美形の「王子様」で、隠し撮りのためにカメラを持っていこうと企んだりする。

 そんなある日、友香はとなりの男子高の2年生・宮沢新(みやざわ・あらた)と接点を持つ。友香は憶えていなかったが、新はかつて友香と同じピアノ教室に通っていた時期があり、友香のピアノの腕前を知っていた。バンドを結成したばかりの新は、ぜひとも友香にキーボードを担当してほしいと考え、友香のことを探していたのだった。新にチケットを渡され、女子高と男子高の合同パーティー(ものすごく立派なホテルが会場!)に出向いた友香は、バンド演奏のステージを見てびっくり! ボーカルの彼はなんと、友香が毎週電車で見かけていた例の王子様だったのだ。そしてこのあと、とんでもない展開が待っていた。演奏終了後、コーラに酔った勢いとどさくさに紛れて彼に抱きつく友香。そのまま眠りについて目を覚ましても酔いが醒めておらず、彼に「好きです」と告白! それに対する彼の答えは、「あたしそーいう趣味ないから」。友香同様、多くの読者もこの時「!」となったであろう。だが、信じられないことに、彼、ではなく彼女、結城芹香(ゆうき・せりか)は、正真正銘「女」だったのである。当然友香は大ショック、「信じない!」とややヒステリックに叫んで現実逃避。連載がはじまった頃の友香は、男に免疫のない夢見る女の子。しかも落ち着きがなく、思い込みが激しく、暴走気味で鈍くさい。りぼん読者が憧れるタイプでも共感できるタイプでもなかった。逆に言えば、りぼん読者にとって等身大のキャラクターではあったかもしれない。

 でも、友香のピアノの腕前は凄いらしい。パーティーの翌日、新以外のバンドメンバーも女子高の音楽室で友香の演奏を聴き圧倒される。うちのバンドでキーボードをやらないかと、この時友香は正式に誘われるのだが、昨日のショックが尾を引いている友香はそれどころじゃない。放課後は校門のところで芹香が友香を待っていた。女子高の友達は皆、芹香が男だとは気づいておらず、友香を羨ましがってくる。「こいつらに『実は女でした』なんてまぬけなこといえるか」、と友香は内心ひやひや。芹香は、バンド加入の話を真剣に考えてくれないかと話す一方、友香の一目惚れに対しては「幻想」「笑っちゃうよ」とあまり取り合う様子はない。カチンときた友香は「女だとわかった今でもその気持ちはこれっぽっちも変わっていないわよ!!」と反発、バンドの話を引き受ける。友香がバンドに加わって、物語は本格的に動き出す。プロデビューを目指すバンド活動と恋愛ドタバタが絡まり合って、ハイペースに進行していく。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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