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東京大学による女子学生家賃補助への批判が残念な理由 日本の女子達は3200億円程の不平等を受けている

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 先月、東京大学が女子学生に3万円の家賃補助を来春から導入することが話題になりました。前回「日本のトップスクールが男女不平等を拡大させているという罪」に書いたように、東京大学は日本で公教育支出を最も多く受け取っている高等教育機関にもかかわらず、世界的にも最も男女比が歪なトップスクールの一つとなっており、日本で公教育支出が男女間で不平等に配分されている象徴となっています。

 女性が一人暮らしする場合、一階には住みづらい、明るく人通りの多い場所が望ましいなど、住居のセキュリティに対するニーズが男性よりも高くなります。今回の家賃補助という実質的な奨学金の支給は、“ジェンダー平等”を超えて“ジェンダー公平”を狙った策であり、また公教育支出の男女不平等を是正するものとして有効な手立てとしても評価できるものでしょう。

 女子学生を対象にした家賃補助に対しては「悪平等である」「女性優遇である」といった批判や、「試験の結果だから仕方がない」といった批判がありました。前者の批判は、そもそも公教育支出が男女で不平等になされているという事実を見落としていますし、後者の批判は国際学力調査で日本は他国と比べても男女間の差が小さい・女子の学力が高いのに女子の進学行動に課題を抱えているという点を見過ごしているだけではなく、そもそも教育は社会の格差を拡大させるため、戦略的な介入が必要であるという点を見過ごしています。

 そこで今回は、なぜ教育が社会の格差を拡大させるのか、日本で公教育支出がどの程度男女間で不平等になされているのか、これを克服するためにどの程度「女子専用の奨学金」に支出すべきなのか、話をしていきたいと思います。

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畠山勝太

ミシガン州立大学博士課程在籍、専攻は教育政策・教育経済学。ネパールの教育支援をするNPO法人サルタックの理事も務める。2008年に世界銀行へ入行し、人的資本分野のデータ整備とジェンダー制度政策分析に従事。2011年に国連児童基金へ転職、ジンバブエ事務所・本部(NY)・マラウイ事務所で勤務し、教育政策・計画・調査・統計分野の支援に携わった。東京大学教育学部・神戸大学国際協力研究科(経済学修士)卒、1985年岐阜県生まれ。

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日本の教育格差 (岩波新書)