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「男の産休」に言及した安倍首相 制度はあるのに低い男性の育休取得率を改善させるには?

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Photo by basibanget from Flickr

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安倍首相が、育休に加えて、妻が出産する国家公務員は全員、妻の産休中に数日間の休暇、つまり「男の産休」を取得してもらいたいと発言したことが話題になりました。批判の声も上がっているようですが、上意下達によってしか女性の社会進出も進まず、国が祝日を設定することでしか有給取得率世界最低の現実に抗えない日本では、今回のように首相が「男性の産休取得」を直接的に示唆することも仕方のない方法なのではないかと思います。

厚生労働省の説明を見ると、育児休業は男女が取得できることが明記されており、また取得可能期間にも差はありません。一方、産休には「男女が取得できる」と明記されていません。そもそも産休とは、母体保護を目的とした休業だからです。当然、男性は取得できないことになっています。

この状況を変えて、男性も産休を取得できるようにしようというのが、今回の安倍首相の発言の意図だと思われます。男性が取得することが許されていない産休はともかくとして、平成27年度の男性の育休取得率は2.65%でした。女性の育休取得率が81.5%であったことを考えると、非常に低い数値です。

OECDの、父親の産休・育休(父親休業)に関する調査によると、OECD加盟国の多くの国々で、父親が取得できる法律上の父親休業日数は日本よりもずっと低く抑えられています。そもそも、父親のみならず母親にさえ産休・育休が法的に定められていない国もあるくらいです。OECD加盟国の中で、最も長い父親休業の取得が認められているのは、53週間の韓国、52週間の日本です。しかし、韓国の育休取得率は5%程度、日本の育休取得率が2%程度ですから、いずれも制度はあるのに取れないという、皮肉な制度設計としか言いようがありません。このような現状を考えれば、ただ単に男性が産休を取れるような法律に変えるだけでは、男性の産休・育休取得率が飛躍的に向上するのは難しいでしょう。

とはいえ、日本や韓国だけが「使えない制度設計」になっているわけではありません。2014年のILOの報告書によれば、オーストリア、フィンランド(*注参照)、ポーランドでも男性の育休取得率はいずれも3%を切っています。

(*フィンランドの男性育休取得率について、フィンランド大使館よりご指摘をいただきました。ILOの報告書よりも後に出されたフィンランド政府の発表によると、現在の男性育休取得率は80%を超えているとのことです。詳しく調べてみたところ、フィンランドでは2006年から2013年の間に、育休取得者全体に占める男性の割合が倍増し、男性育休取得率そのものも大幅に上昇しました。男性の育休取得率が低いことを問題視した政府が、「親休業」や父親限定の「父親休業」の導入などの大々的な政策改革を行って成し遂げたものです。今回の記事は古いデータに基づいており、フィンランド政府関係者の方々に大変ご迷惑をおかけいたしました。今回のご指摘を通じて、政府がいかに子育てにおける父親の関わりや、男女平等な社会の推進に力を入れているかを改めて知る素晴らしい機会となりました。ありがとうございました。)

しかし、世界には数年で男性の産休・育休事情を大きく改善した国々もあります。こうした国々の事例を参考にすれば、日本の状況にも希望が持てると言えないこともありません。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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