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若いだけが女優じゃない!おばあちゃんが大活躍する海外映画・ドラマの世界

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ダイアナ・リグ『ゲーム・オブ・スローンズ』公式サイトより

ダイアナ・リグ『ゲーム・オブ・スローンズ』公式サイトより

 次に紹介したいのは、アメリカのHBOがジョージ・R・R・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』シリーズをもとに作ったドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』です。messyでも一度特集されているヒット作なのでご覧になった方も多いかと思います。架空の地域ウェスタロスやエッソスを舞台に、七王国を統べる王座をめぐって争う人々の権力闘争を壮大なスケールで描いています。

 このドラマに出てくる私のお気に入りキャラのひとりが、ダイアナ・リグ演じるおばあちゃん、オレナ・タイレルです。オレナは若い頃は大変な美人だったようで、ハイガーデンの領主ルーサー・タイレルの寡婦です。有力ですが頼りない男性ばかりのタイレル一門で事実上の当主をつとめ、孫であるロラスとマージェリーの栄達のためには手段を選びません。機知に富んでいて皮肉ばかり言っていますが、宮廷政治のプロで、作中随一の策謀家である王の外祖父タイウィン・ラニスターと対等に渡り合えるほぼ唯一の政治家です。第6シーズンでは愛する家族を失ってひどい痛手を被ったオレナが、第7シーズンでどんな策謀をめぐらせてくれるのか楽しみです。

 ヴァイオレットやオレナはどちらも機転の利くおばあちゃんということでしばしばファンの間で比較されますが、一方でこのようによく描けた老女キャラがそもそもあまりテレビに出てこないため注目されているという指摘もあります。ヴァイオレットが人気を博した後にオレナが出てきたこと、また原作に比べてテレビドラマではオレナが少し複雑で大きな扱いになっていることを考えると、視聴者はもっとこうした奥行きのある年配の女性キャラを求めており、クリエイターのほうもある程度視聴者の動向を汲んでいるのかもしれません。

おばあちゃん映画・ドラマの重要性

 駆け足でいろいろなおばあちゃんが登場する映画やドラマを紹介してきましたが、共通しているのはどの作品も、おばあちゃんをステレオタイプな存在として描いていないことです。今回紹介した映画やドラマのおばあちゃんたちはいろいろな人々と付き合い、自分の趣味や仕事を楽しむ深みのある人間として描かれています。欠点(たいていは凄く頑固)も良い点もたくさん持ち合わせており、完璧ではありませんが人間味に富んでいます。女性が若さや外見の美しさだけで価値をはかられがちな現代社会において、そうしたものを持ち合わせない、あるいはそうしたものから解放されつつ、老年に伴う知恵や経験を身につけた女性の生活を生き生きと描くことは、ステレオタイプを打ち破り、女性の映画ファンやテレビドラマファンに希望を与えることにつながると思います。早死にしないかぎり、老年はやってくるものです。生き生きしたおばあちゃんが登場する作品を見て老年の準備をするのも悪くないだろうと思います。

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北村紗衣

北海道士別市出身。東京大学で学士号・修士号取得後、キングズ・カレッジ・ロンドンでPhDを取得。武蔵大学人文学部英語英米文化学科専任講師。専門はシェイクスピア・舞台芸術史・フェミニスト批評。

twitter:@Cristoforou

ブログ:Commentarius Saevus

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