社会

少女像撤去は明言されていなかった。合意のない合意が生じさせた、少女像対立問題

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Photo by Brittany Wallin from Flickr

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あけましておめでとうございます。

私は今、韓国に来ています。現在、釜山の日本領事館前に慰安婦少女像が設置されたことで、日韓の間では火花が散っています。今回は、慰安婦問題と日韓合意、そしてその問題点について考えてみたいと思います。

今回の事件は、2015年の日韓合意に反対する韓国の市民団体が昨年12月28日に少女像設置を強行したことで起きました。当初、釜山市東区当局は設置許可を出さず地元警察が強制撤去を行いましたが、市民からの非難が殺到し「自治体の手には負えない」として、30日に設置を容認、市民団体は再度同じ場所に少女像を設置しました。それに対し日本政府は「合意と違う」と韓国政府に対して抗議するとともに、日韓通貨スワップ協議の中止、駐韓大使の帰国などの報復措置を取りました。

今回の問題の原因は、日韓合意が「何にも合意していないこと」にあるでしょう。日本では「慰安婦像撤去に合意した」と解釈されている日韓合意ですが、その内容を見ると、どこにも慰安婦像撤去は明言されていません。

外務省のWebページで公表されている合意内容によれば「韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」となっています。つまり、韓国側は一言も「少女像の撤去が解決策であると考えている」とは言っていないのです。(出典:http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html

韓国政府による慰安婦像の撤去は努力義務です。一方で、日本政府が「日本政府の予算により(中略)全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこと」は、韓国政府が「日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する」「今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える」ことの前提です。つまり、日本政府の「10億を支払ったのに合意が履行されていない」などという主張がそもそもおかしな話で、「元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の癒しのための事業」がなされて初めて、韓国側の努力義務が発生するのです。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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