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やっぱりモテなきゃダメですか? 2人の非モテが読む二村ヒトシ『すべてはモテるためである』

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杉田俊介さんと、まくねがおさんが、「男らしさ」についてあれこれと思索する対談連載「男らしくない男たちの当事者研究」。過去2回に渡り、近年起きている「男性論ルネッサンス」の検証として、田中俊之『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、坂爪真吾『男子の貞操』(ちくま新書)を取り上げてきました。今回は、二村ヒトシさんの『すべてはモテるためである』(文庫ぎんが堂)。二村さんの足跡を辿りながら、「モテ」について考えていきます。

知性主義的モテ本『すべてはモテるためである』

杉田 この連載では、いま起きている「男性論ルネッサンス」を検証するため、田中俊之『〈40男〉はなぜ嫌われるか』、坂爪真吾『男子の貞操』を取り上げてきました。今回は二村ヒトシさんの『すべてはモテるためである』です。本書は1998年に刊行され、その後2002年に『モテるための哲学』とタイトルを変更して幻冬舎社から文庫が出ています。そして、2012年に大幅加筆された『すべてはモテるためである』が出版され大きな話題になりました。いかにも「モテ本」的なそのタイトルに反して、男性たちの性的な「こじらせ」についてのとても誠実な分析になっていますね。二村さんはアダルトビデオの監督としても有名です。

まく この本は、マニュアル本として書かれていますね。それも安易な方法論を示さない、自分の頭で考えるためのマニュアル本。特徴的なのは「あなたがモテないのは、あなたがキモチワルイからだ」と、まずは徹底的に、読者に自己否定させるアプローチを取るところだと思います。これは、モテる男になるためのマニュアル本だと思って手に取った読者を想定した書き方だと思いますね。

杉田 なるほど。

まく そしてこの本は、モテずに気持ち悪がられている人に向けて、懇切丁寧に、順序立て、整理立てて、モテについてどう考えていけば良いのかを提示していきます。適宜、モテに悩む男性読者に向けたメッセージが入っていく。文体としては軽いのですが、放たれるメッセージは重いし鋭い。そんな本だな、と思いましたね。

杉田 自意識過剰になって考え方が堂々巡りしているとキモチワルイ男になってしまってモテなくなる。しかし二村さんが言うのは、考えずに行動しろ、ということではない。逆です。ちゃんと考えるべきことを自分の頭で考えろ、と。最近は「反知性主義」という言葉が流行っていますが、これはいわば「知性主義的」なモテ本だと感じました。

まく そうですね。考えることの大切さを訴えつつ、でも考えすぎ、臆病になりすぎて行動できないようにもなるな、というメッセージがありますね。「相手に応じて変わっていこう」と訴えるところが、僕には非常に印象的でした。

杉田 コンプレックスを否定していないのがいいですね。治そうとするにせよ、受け入れるにせよ、自分のコンプレックスとちゃんと付き合え。そうすれば、「心の穴」(弱さ)こそ君の魅力や長所になる、と。

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まくねがお

まくねがお(ハンドルネーム)。シスへテロ男性。二年前からツイッターを使い始め、「男性性と暴力を考える」というテーマで、自分のことや映画のこと等を素材に、呟きながら考え続けています。

杉田俊介

1975年生まれ。異性愛者の男性(暫定)。人の親。批評家。20代半ばから障害者介助をしてきたが、現在はお休み中。著書に『非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か』『長渕剛論』『宮崎駿論』など。

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すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)