一般市民がJFK空港に駆け付けたデモ
トランプが1月27日に出した大統領令「シリア難民の受け入れ停止」「イスラム7カ国人の入国禁止」が出された瞬間に、アメリカへと向うフライトに乗っていた指定7カ国の人々は空港に到着するや拘束された。この大統領令はアメリカ国内に留まらず、世界中を大混乱に陥れた。
この異常事態にニューヨーカーは怒った。大統領令が発布されたその日のうちに多くのニューヨーカーがJFK空港に駆け付け、自発的に抗議デモを行った。市民が集まり、弁護士たちがボランティアで参加し、後に地元政治家もやってきて該当者支援を行った。またニューヨーク州の大物上院議員チャック・シューマーはイスラム教徒の一家と共に抗議のコメントを発した。その際、シューマー議員はニューヨークを象徴するアイコン、自由の女神の台座に刻まれている詩の一節を引用している。
「疲れ、貧しく、身を寄せ合い、自由を渇望する人々を私に与えたまえ」
まさに今、何もかも失い、恐怖のどん底にいるシリア難民に該当するフレーズだ。
シューマー議員は、自分のミドルネーム「エリス」はニューヨークにあるエリス島にちなんでいるとも言った。エリス島は自由の女神がそびえるリバティ島の対面にある、昔は移民の受け入れ場所となっていた島だ。シューマー議員の祖先はユダヤ系の移民なのである。さらにシューマー議員は自分の娘には先の詩を書いた詩人、エマ・ラザラスにちなんだ「エマ」というミドルネームを与えている。移民の子孫であることが、シューマー議員にはとても重要なアイデンティティなのだ。そんなシューマー議員がこの会見で詩を詠みながら思わず涙ぐんだことを、ドナルド・トランプは「ウソ泣きだ。演技のコーチが誰なのか、本人に聞くぞ」と侮辱した。
※『実写化バービーは“ぽっちゃり”コメディアン 多様な体型を提示するマテル社は「強さ」と「確信」を芽生えさせる』で取り上げたコメディアン/俳優のエイミー・シューマーは、シューマー議員のイトコ。エイミーも政治的発言を行うことで知られる