エンタメ

母親として、アーティストとしてのビヨンセとアデル グラミー賞での多様な政治的メッセージ

【この記事のキーワード】

ラップはここまで政治的になれる!

 ラップといえば、もっとも過激なアンチ・トランプ・パフォーマンスを披露したのはラッパーのバスタ・ライムスだった。ラップ・ユニットのア・トライブ・コールド・クエスト(ATCQ)のステージに加わり、皮肉たっぷりに「失敗したムスリム禁止令について、オレはエージェント・オレンジ大統領に感謝したいね」とラップした。

 “エージェント・オレンジ”とは人体に非常な害を与える枯れ葉剤のことであり、トランプ大統領の顔がオレンジ色であること、大統領の政策が人々に甚大な害を与えていることを掛け合わせているのだ。バスタもATCQのメンバーもアメリカ人ムスリムである。

 バスタは、米国憲法の冒頭のフレーズと同じATCQの新曲のタイトル『ウィ・ザ・ピープル』を連呼。ステージ背後に模された、トランプが作ると宣言している“メキシコの壁”が打ち壊され、ヒジャブを被った女性を含む多種多様な人々が通路を行進してステージに上がり、拳を挙げて「レジスト!」(抵抗!)と声を上げた。

MAKE AMERICA GREAT AGAINドレス

 一方、トランプ支持を表明するアーティストもいた。R&Bシンガーのジョイ・ヴィラはレッドカーペットのカメラの列の前で、纏っていた白いガウンを仰々しく脱ぎ捨てた。中に着ていたブルーのドレスには大きな文字で「トランプ/メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」と書かれており、ドレスの写真は瞬く間にSNSに溢れた。

 写真には「いったい、何を考えているんだ!」といった批判のコメントも多く付いたが、それほどの知名度もなく、グラミー賞にノミネートもされていないジョイの曲のダウンロード数がこの件によって激増したと言う。

 大統領にアンチを唱えるアーティスト。大統領への支持を表明するアーティスト。現在のアメリカの状況は確かに常軌を逸しているが、各々のアーティストが政治的メッセージを堂々と発せられる間は少なくとも健全であり、アメリカはまだ「自由の国アメリカ」であると言えるのではないだろうか。
(堂本かおる)

1 2 3

堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

[PR]
[PR]
Lemonade