「女の子らしくない」を理由に、男児向け玩具を買わないすべての親に知って欲しいアイドル“アンジュルム相川茉穂”

famliy 2017.02.17 10:00

『トクサツガガガ』丹羽庭(ビッグコミックス)

「仮面ライダーゴーストのベルト買って」
「○○は女の子だから買いません! ゴーストのベルトはダメよ、男の子のやつやもん」
「男の子になるから!」

 2017年1月29日に放送された『フルタチさん』(フジテレビ)。番組内の「子供の屁理屈」を取り上げるコーナーで放送された投稿動画が1月末にウェブ上で話題になった。

 「男の子用おもちゃが欲しい女の子の屁理屈」として紹介されたこの動画。登場するのは、仮面ライダーゴーストの変身ベルトのおもちゃがほしい女の子だ。「買って」とねだって泣く女の子に、母親が「変身ベルトは男の子のおもちゃ」「女の子だからダメ」という理由を返す。そのやりとりを見て番組出演者が笑う。SNSでは「これって大人の屁理屈でしょ?」「何を欲しいと思うかに性別は関係ない」「笑いものにする大人の感覚がおかしい」と、女の子に理解を示したり母親や出演者を非難したりする声が目立った。

女児向けおもちゃを与えたら優しくなるわけじゃない

 「男の子になるから!」と宣言した動画の女の子は、どうやって男の子になるのかを母親に聞かれこう答えた。

「ちんちん作って、ちんちんをここ(股間)につけて、そこからおしっこをシャーってして」
「ハゲにしたい! ハゲにしてちんちんある方が良かった」

 女性として生まれた子が「男の子に生まれた方が良かった」と言う。アイデンティティの一部にもなる自分の身体の性を、なぜこんなに幼くして否定しないといけないのかと思うと悲しくなった。実際は、そこまで深刻な話ではないのかもしれない。「女の子らしさ」を押しつけているわけではなく、母親にとっても高価なおもちゃを諦めさせるための屁理屈だったのかもしれない。しかし、それでも大人たちが必死な女の子を笑う姿はグロテスクに感じる。

 動画を見て、特撮が好きな気持ちを否定されて育った女性を描く漫画を思い出した。「週刊スピリッツ」(小学館)で連載中の『トクサツガガガ』(丹羽庭)だ。主人公の仲村叶は26歳のOL。こども向けの特撮ヒーローが好きだが、周囲には隠している。幼い頃から母親に「女の子でしょ」「みっともない」と特撮が好きな気持ちを否定されてきたことや、大切な特撮の雑誌を燃やされたことなどに、26歳になってもとらわれているためだ。

 叶の母親は「自分ができなかったことを娘に押し付ける」タイプ。可愛い服を着たり女の子向けのおもちゃで遊んだりすることが叶の幸せだと信じている。母親の押しに負けて、叶も一時期は「まとも」な女の子らしい振る舞いをして特撮のことは忘れていた。

 女の子らしく育ってほしいという母親の願い。「女の子らしい」とは、つまりどういうことだろうか。日本青少年研究所の調査(2004年)では、女性らしいイメージがある言葉について「やさしい」「かわいい」「おとなしい」などが高い割合となっていた。このほか、俗に親がこどもに望む女の子らしさには「感情表現が豊か」「細やかな気遣いができる」などがあるようだ。では、母親の言うことを聞いた叶が女性らしい性格に育ったかというと、そうでもない。1話に、女子トイレにいる叶が他の女性社員の話を盗み聞ぎしてしまう場面がある。

女性社員A「みうっちの彼氏、アニヲタだったらしーよ。」「なんかね~ 言うの恥ずかしかったんだって!」
女性社員B「好きなら堂々としてればいいのに。自分でも恥ずかしいモノだって思ってるから隠すんでしょー。」

(言っていいなら言うよ!! 君のウチにDVD持ってって毎晩 上映会するよ!!)
(『トクサツガガガ』1巻 丹羽庭 小学館 P17-18より)

 どうしてそうなるのか。「好きなものを好きと言っていい」と「相手が見たいかわからないものを無理に見せていい」は全然違う。恋人が特撮好きを受け入れてくれることと、恋人も特撮好きになってくれることは違うのに、自分の「隠したい」気持ちを優先したせいで叶は相手の気持ちを考えられない人になっている。

 また、第2話でもカラオケを楽しむ人を「一般の人」と呼び自分と切り離して考えているし、第6話では仲良くしたくて話しかけてきた男性に平気で嘘を吐く。「一般の人」には、自分のように悩んだり傷ついたりする感情があると気付いていないように描かれているのだ。

 何かを好きになるという自然発生的な感情を抑圧されることで、自分を守るために「隠さなければいけない」という義務感ばかりに意識が向く。そのため、他人の気持ちを考えることができなくなってしまう。女性らしさを押しつけたばかりに「女性らしさ」が失われるというのは、本末転倒だ。

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