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90年代生まれナチュラル女子の感性を育んだ『グッドモーニング・コール』のほどよくオシャレな理想郷/高須賀由枝

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りぼんマスコットコミックス版『グッドモーニング・コール』一巻/集英社

りぼんマスコットコミックス版『グッドモーニング・コール』一巻/集英社

1997年に集英社『りぼん』で連載がはじまった高須賀由枝の『グッドモーニング・コール』(1997~2002年)。90年代『りぼん』の中では後発ヒット作で、ケータイとかパソコンとかカフェとか、現在も使用されているツールが登場している。それなのに、え、もう20年前かよってただただ驚愕。さすがにPHSなのは時代を感じるけれど、今読み返してもさほど古臭くないからすごい。

中3の夏休みが始まると同時にひとり暮らしをはじめることになった男女、吉川菜緒(よしかわ・なお)と上原久志(うえはら・ひさし)が、引っ越し先の部屋でばったり遭遇。悪質な不動産屋による二重契約に引っかかってしまったのだ。学生のひとり暮らしといえば1Kあたりが主流だが、幸いにも(?)2人が同時に借りた部屋は、2LDK(8畳のリビング、6畳の個室×2)で、むしろルームシェアにはうってつけ。かくて、中3男女の2人暮らしがはじまって、恋が芽生え……というストーリーだ。

菜緒と上原は同じ中学の同級生だけどこれまで面識はなし。超イケメンで校内“御三家”の1人である上原の存在を菜緒は一応知っていたが、上原は菜緒の顔も名前も知らなかった(大規模校なんだな)。菜緒は(絵としては勿論スペシャル可愛いけれど)普通の女子中学生。まあ、それでもリアル女子中学生よりは大人びているかも。

“イケメン男子と住む”という設定は、ある意味、少女漫画のヒット要素で、読者ウケがいい。90年代『りぼん』だと、両親の交換結婚と同居で子ども同士も一緒に暮らすことになった『ママレード・ボーイ』(吉住渉、1992~1995)、父親の海外勤務についていくことを拒んで初恋の年上男子宅に居候する『ベイビィ★LOVE』(椎名あゆみ、1995~1999)が有名どころであろう。りぼん読者(主に女子小学生)に夢と刺激をほどよく与えてくれる両作品は、いずれも爆発的大ヒットとなった。

両作品より後発の『グッドモーニング・コール』の場合、“イケメン男子と住む”に加えて、さらなる刺激的要素が。

親 が い な い。

中学生なのに親が一緒に住まない。思春期児童であるにもかかわらず、親元を離れ、寮にも入らず、親戚宅に居候もせずに、広くて清潔でおしゃれなマンションに暮らすなんて、もうそれだけで羨まし過ぎる。そもそもどうして彼らがそれぞれ子供の分際でひとり暮らしをするハメになったのか?

菜緒はド田舎に住む祖父がぎっくり腰で入院、父が家業の農業を継ぐことになったのだが、ド田舎に行きたくないため付属高校で寮に入るまでの半年間ひとり暮らしをしたいと親に要求・交渉。「やっぱりお母さん心配だわ~」と言いつつ、親も親で、あくどい不動産屋の2LDKの部屋を8万で借りられる、という嘘を疑いもなく信じて、引越しにも立ち会わず田舎に行ってしまったのだからユ、ユルイ……。

一方の上原は、小学生の頃に両親が他界、以来11歳上の兄・卓也を頼って生活してきたが、卓也が結婚。しかもその結婚相手・百合(ゆりりん)は兄弟の幼なじみで、上原が長年片思いしていた相手であるため、「好きな女とそのだんなと一緒になんて暮らせない」と家出したのだ。家賃8万円を自分で払う必要があるので年齢を偽ってコンビニやレンタルビデオショップでバイト中。保護者ナシで契約しちゃえる不動産屋、やっぱりヤバイ。連載当時は自分も子供だったから何も疑問に思わなかったけれど、菜緒は「家賃8万」上原も「家賃8万」でこの部屋を契約しているのだが、実際に大家さんが提示している額は「家賃15万」。普通に考えて、管理費入れたら16万超えるだろう。ん? あくどい不動産屋、夜逃げ直前だったため出来るだけ多くの物件の賃貸契約を成約させ仲介料を受け取ろうという魂胆だったらしいが、法外な家賃設定したわけじゃなし、契約がいい加減だったこと以外は別にたいして悪くないんじゃ……?

そんなことマンガに言っても仕方ない、仕方ない。ともかくも菜緒と上原は中3にして男女2人暮らしというトキメキの詰まった環境に放り込まれて物語がスタート、第一話ラストでは早速、寝起きの上原が菜緒を百合と間違えてキスする……という刺激的な展開が訪れ、読者をドキドキさせたものだった。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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