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「彼に愛されるために頑張る女性」を応援すると見せかけて、袋小路に追い詰め苦しめる恋愛アドバイス群

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わたしたちは愛についてよく知らない

わたしたちは愛についてよく知らない

パソコン、さらにはスマホの普及により、いつでもどこでもネットにアクセス可能な今の世の中。ネット上にはありとあらゆる情報が溢れていて、まさに玉石混交。「女子」「女性」をターゲットにした恋愛系のアドバイス記事ももちろん山ほどあるのだが、残念ながらその多くがクソの役にも立たないように思えてならない。

たとえば、チケットぴあが運営する<「満たされたい、もっと。」ワガママで移り気がゆえに、いつまでも満たされない、そんな女子たちの欲望をくすぐるメディア。mimot.(ミモット)>には、「いい恋したい」というカテゴリがあるが、そこに掲載された『彼にとって「価値ある女」になりたい!唯一無二の存在になる方法』という記事をたまたま拝読したところ、かなり疲れる提案がなされていてビックリした。最初の一文がもう強烈だ。

「彼にとっての唯一無二の存在になりたい!」恋する乙女ならそう願って当然です。
そこで今回は、彼にとって価値の高い存在になれる方法をお伝えします。

恋愛で「頑張る」べきところ

この記事は、恋愛中の女子が彼氏あるいは片想いの彼にとって「希少価値ある=特別」な存在になるための方法を(ざっくり)レクチャーしているのだが、結論から言うとその方法というのは、『「彼の好み」を“満たしている”女性になる』『彼と同じ趣味嗜好を持つ』。手軽に実践できるものならいいけれど、要するに、相手の都合を把握してそれに合わせれば愛される、と言っているのである。

努力や根性や頭の回転でどうにかなるとは限らないのが恋愛だと思うが、この記事は努力・根性推奨型で、努力すればするほど同等のメンテナンスが重要だってことはスルー。文字数少なめのざっくりアバウト系の記事なので、サイトとしてはさらっと読むであろうことを想定しているのかもしれないが、さらっと読むか深読みするかは読者の勝手である。そして深読みした読者、真に受けた読者がいたら……相当気疲れするだろうことは間違いない。だって、どれだけ努力したって相手が振り向いてくれない可能性はあるし、言うなればこれは、女の自己犠牲の精神を鍛錬するだけのメソッドだ。

彼にとって唯一無二の存在になるための方法として、記事ではまず、「彼の好み」をいくつ“満たしている”か、その数が多いほどあなたの価値は高まると説く。さらに「希少価値は掛け算」であると言い、たとえば「彼の好み」が「料理上手/いつも笑顔/清楚/倹約家/マラソンが趣味/スタイルが良い」だとして、まず「料理上手」、次に「いつも笑顔」……と“満たしている”を掛け算していくことで、希少価値はどんどん高まっていくそうだ。だから自分の得意なことから実践して、“満たしている”を増やし、彼にとっての希少価値を上げれば、唯一無二の存在になれるよ、と。

最初よく意味が分からなかったが「希少価値は掛け算」というのは、まず“満たしている”の定義を「平均より上」とし(あくまで仮定、だよね?)→全世界女性のうちの「料理上手」が約半数の50%だとして→「料理上手」になればその50%に入れる→「いつも笑顔」も全女性のうちの50%だとして→「料理上手」に加えて「いつも笑顔」も備えれば、その分希少値が高くなるよ、と、かな~りアバウト。仮にもし、「料理上手」は「いつも笑顔」な人がほぼほぼ被っていたとすれば、両方備えたところで希少価値は上がらないことになるけれど……。ってか、自分の彼氏や片想いの彼の好みが本当に「料理上手」だったとして、その「料理上手」とはいかなるレベルを言うのかはその彼によって判断基準が違うわけで、まず「彼の好み」を詳し~く分析しなきゃいけない。こうなってくると「彼の好み」を把握するのだって骨が折れそうだ。

記事ではさらに、自分の得意なことを伸ばすといっても、“彼にとって価値が高いと感じること”でなければ、稀少価値の掛け算には追加されないとも忠告し、彼の価値観に沿うことの大切さを説いている。たとえば、あなたが「とてもオシャレでファッショナブル」だとしても、彼が「オシャレにお金をかけるのは浪費」という価値観なら、かえってマイナスだと。彼が「お金をかけずに小綺麗にすること」に価値があると感じているなら、あなたも彼の価値観に沿うようにすることで、稀少価値の掛け算に追加される、と。え、それではまるで女子中高生がグループで浮かないように空気を読んでオシャレするのと変わらないではないか。今、自分自身がやりたい(あるいはやれる)ファッションを楽しむことよりも、「愛されたければ」、彼の価値観を優先させる必要がある、という。それで彼と結婚したとしても、本来自分が持っている価値観を曲げ続けなければならず、さらに無理を重ねることになりそう……。

さらに、もし彼がマニアックで女性に少ない趣味・志向(「ファンがとても少ないミュージシャン」「アマチュア無線」「電車の時刻表」を例に挙げている)を持っているならばあなたが同じ趣味嗜好を持つことで、彼にとってのあなたの希少価値は圧倒的に高まる……だそうだが、もともと趣味や嗜好を持っていた相手と会話が盛り上がって恋愛関係に発展するのではなく、恋愛相手としての希少価値を高めるためにわざわざ同じ趣味や嗜好を持つって、めちゃくちゃ疲れると思う。

意中の彼から希少価値の高い女だと認められるために、自分には全く興味のないアマチュア無線について調べるなんて……受験勉強より辛い。嫌いな科目のテスト前日を思い出す。しかも、テスト勉強は嫌いでも頑張ってやらなきゃ赤点になってもっと困ると、結果が目に見えているが、恋愛の場合、頑張って彼と同じマニアックな趣味を持ったところで、うまくいくとは限らない。しかも彼の趣味に対する情熱が強ければ強いほど、中途半端な真似事(=実は興味なし)は見破られてしまうんじゃないのか? 興味がなければ手出しせずに見守っておいたほうがお互いのためであろう。大体、恋愛で「頑張る」べきところって、そういうところなのか?

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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