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弁護士が指摘する「子を自分だけのものにできました日本最高」ブログの間違い。親子断絶防止法に欠けている視点とは?

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Photo by Stephan Hochhaus from Flickr

子を自分だけのものにできました日本最高」という匿名ブログが話題になっている。夫と子どもの教育方針について口論するうちに、子どもと夫を切り離し、自分の好みで育てるために離婚したくなったというブログ主が、弁護士と相談し、実際にはなかった言葉のDVなどをでっちあげ、「婚姻費用分担調停」を結んだ、という記事だ。この記事には、事実と受け止めブログ主を批判するコメントから、現在議論が白熱している「親子断絶防止法案」に賛成する人間が反対する人びとを貶めるための創作ではないかという指摘まで、様々な反応がみられた。実際にブログで取り上げられているようなことは起こりうるのだろうか。

打越「全体的に違和感を覚えます。弁護士は『離婚したい』という相談を受ければ、調停など離婚を実現するための進め方を考えます。例外的に有責配偶者側から、例えば妻子を捨てて不倫相手に走っていった夫から離婚したいと相談を受ければ、『いまはなかなか離婚が認められるような状況ではないので、別居期間を設けて、その間きちんとお金を払って、離婚してもらえるようにお願いしましょう』と提案することはありますが、基本的にこちらから『作戦』を持ちかけるようなことはしません」

離婚やDVなどの問題に詳しい打越さく良弁護士は、「弁護士の使い方からしておかしい」と指摘する。匿名ブログでは、離婚調停ではなく、あえて婚姻費用分担調停で話を進めたとあるが、まず婚姻費用分担調停とはどんなものなのだろうか。

打越「離婚したいと考えていても、離婚に同意してもらえない場合に、離婚調停と並行して婚姻費用分担調停も行うことがあります。離婚しないなら、せめて扶養義務は果たしてください、と言って、収入が多いほうが収入の少ないほうに費用を支払うよう調停を申し立てるわけです。

ブログでは、婚姻費用分担調停とDVが結び付けられていますが、婚姻費用分担調停は双方の年収やお子さんの人数、年齢などで決められていますから、DVがあるかないかは関係がなく、あえてDVと主張することには疑問があります。また、ブログには養育費よりも婚姻費用分担調停のほうが、額が大きいと書いてありました。確かにその通りなのですが、だからといって婚姻費用の現在の相場で十分かのような誤解が広まることには懸念を覚えます。例えば日弁連は、現在実務で用いられている算定表は計算方法に問題があり、子どもの教育環境を著しく低い水準に固定化する等の批判を長年してきたんです」

ブログ主は「実際にはDVがないにもかかわらず、激しい言葉のDVがあったことにした」と書いている。さらに、嘘や矛盾があったとしても、夫の反論の激しさが「夫婦間の葛藤」の存在を証明する、とも。

打越「嘘や矛盾は重視されますし、過去の事実の客観的証拠が吟味され、葛藤やDVの有無を総合的に判断します。反論したから即座に『葛藤があった』と認められるということはなかなかないでしょう」

気になるのが「婦人相談所にDV被害の相談をして、証明書を発行してもらえばいい」といった記述だ。DVの有無は、婦人相談所からの証明書ひとつで立証されるものなのだろうか。

打越「供述や証明書だけで認められることはありません。DVの立証は客観的証拠が重視され、本当に難しいんです。密室で起こることですし、自分が夫からの暴力に耐えて、うまくやっていけばいいと考えていた人は、DVを受けた証拠を逐一残していないことのほうが多いです。だから私たちも苦労しているわけで……。診断書やケガの写真、知人への相談メールやLINEなど、様々な証拠からDVがあったことを緻密に裏付けていくんです。架空の話をして『なるほど、DVがあったんですね』と裁判所が納得してくれるなんて、少なくとも私は経験したことがありません。

また『婦人相談所の証明書は、暴力があった事実を証明するものではないことを、調停委員も家庭裁判所裁判官も知らない』というのは、首を傾げます。知らないも何も、書面上に書いてあるんだから読めばわかることじゃないですか」

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