家族

弁護士が指摘する「子を自分だけのものにできました日本最高」ブログの間違い。親子断絶防止法に欠けている視点とは?

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ブログ主はさらに、「今後、子どもに対するDVのおそれがあり、面会は困難」と主張するため、子どもが父親の話題を出すたびにキッと睨むことで、子どもは「この話をしてはいけないんだ」と考え、父親を嫌いになる、と書いていた。

打越「そんなことしたらむしろ子どもはお母さんことを嫌いになるんじゃないですかねえ。夫に暴力を振るわれていた妻が、自分から夫の話をすることなんてあんまりないのではないでしょうか。実際にDVがあったなら、どんなに子どもの前で暴力を振るっていなかったとしても、そのことに気づく子どももいっぱいいます。同じ家にいたら嫌でも気づくものでしょう。

子どもだっていろいろです。両親が離婚した後、母親に暴力を振るっていた父親とは面会したくないという子どももいれば、それでもお父さんには会いたいという子どもだっている。だからお母さんが一生懸命睨めば、お父さんを嫌いになるなんてそんな単純な話ではないんです。

全体的にこのブログは作り話のように感じてしまうんですよね。『子どもに会えないのは、向こうが子どもを洗脳しているからだ』という思い込みを反映しているような気がしてしまいます。子どもに会えないのが自分の振る舞いのためでもあるとは考えない。同居中の振る舞いが原因だとは限らないんですよ。例えば、面会する度『相手が自分の悪口を言ってるんじゃないか』『お前は向こうの味方なんだろう』とねちねち問い詰められて、いやになってしまう子どももいます。それで子どもが会いたくないと拒否するようになったら『やっぱり洗脳されているんだ』って考えてしまう。悪循環ですよね。

親に会うのが嫌だとかあるいは単にめんどくさいとか思っている子どもだって、様々な働きかけによってことで会おうと思うようになることもあるし、会ってみたら楽しいなと感じられることもあるでしょう。スクリーニングと専門的な調整が必要な問題なんです。だから、『父親に子どもと会わせないようにする母親』という単純な物語が流布するのは、弊害が強いと思いますよ」

匿名ブログには、事実として受け止めブログ主を批判するコメントだけでなく、事実かどうかを疑うコメントもあった。また、現在超党派の議員連盟が国会提出を目指している「親子断絶防止法案(「父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律」)」への根強い反対に対して、賛成派が創作した作り話なのではないか、という指摘もなされていた。

親子断絶防止法案は、離婚・別居後に、一方の親が、離れて暮らす子どもと会えない現状を改善することを目的とするものだ。離婚の際には、面会交流や養育費の分担などを書面によって取り決めることを定めており、文字通りに受け止めれば望ましいもののように感じられる。だが、本法案へは各所から懸念の声が上がっている。面会交流が義務化された場合、DV被害のあったケースや、児童虐待を受けていたケースなどでは、なんらかの事件が発生するリスクもある。実際、長崎市では、子どもを会わせるために離婚した元夫のもとを訪れた元妻が刺殺されるという事件もあった(その後、元夫は自殺している)。

打越「親子断絶防止法案については議論がヒートアップしてしまって、なぜこうなってしまったんだろう、と思っています。いま必要なことは、安全安心に面会できるようにするためのサポートを法的にどうやって用意できるかという話ではないでしょうか。ただただ『会わせるのが義務だ!』と言うのではなく、いかに安全に面会交流するためのサポート体制を整えていくかを考えていくほうが、誰にとってもハッピーなことになるはずです。そして、長崎市の事件(注)のような事態が起こらないように禁止制限すべき事案を専門的にスクリーニングする手当も用意しなくてはなりません。

法案を見る限り、『面会しろ』というばかりで、制度を整えようという姿勢が乏しいんですよね。やみくもに『子どもに会いなさい』とするのは問題です。DVや虐待など、面会交流を無理矢理させることが子どものためにもならない事案だってあります。そして、面会交流支援は第三者機関に任せればいいと言われているけど、全国津々浦々に第三者機関があるわけじゃありません。こうした問題をどう解決していくかも考えなくちゃいけないのに、後回しにされていますよね。

特に懸念しているのが、面会交流や養育費などの取り決めをしないまま、別居・離婚することを抑制しようとしている点です。DVを受けているときに、対等に取り決めすることが出来るでしょうか。なんとかDVから逃げて、行政の窓口にシェルターへの避難を相談しに行ったら、『まずは夫婦で取り決めをしてください』と言われてしまうかもしれない。法案にはDVや虐待に配慮すると少し盛り込まれましたが、行政の窓口にはDV事案か虐待事案かを判断しようもありません。行政だってどう対処していいのかわからなくて混乱するんじゃないかと心配です。結局、DV被害者は家から出るのを諦めて、そのままDVを受け続ける日々を送ることになるかもしれません。子どものためにもならないですよね。

私としては、協議離婚をこのままにしておいていいのか、というところから話していかなくてはいけないと思っています。当事者のみの協議に委ねるのではなく、家庭裁判所など司法が協議をチェック、バックアップする。そういう風にしないと、無法地帯のまま、被害者と加害者の間で取り決めがなされ、さらなる被害が生まれてしまうと思うんですね。長崎市の事件のように、リスクの大きな案件もあるわけです。司法が、社会がどのようにサポートするべきか、できるのかという点から、この問題は考えていく必要があると思います」

(注 2017年1月28日、長崎市内で女性が腹部を多数回刺されて死亡した。事件後、元夫が近くの自宅で自殺しているのが見つかった。女性は、昨年11月、元夫によるストーカー被害を警察署に相談していたが、離婚時の取り決めに従って、長男を元夫に面会させており、事件が起こった当日も、面会のために長男を連れて元夫の自宅に訪れたと報じられている(長崎新聞2017年2月2日))

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