社会

「風俗×貧困報道ブームは、迷惑だった」風俗嬢になる理由を問うより「出口」が重要/『風俗嬢の見えない孤立』角間惇一郎氏インタビュー

【この記事のキーワード】

「入口」よりも「出口」

――なぜ40歳の壁があるのでしょうか?

角間 「女性の魅力がなくなるからだ」と思う人もいるかもしれません。しかし、魅力よりも大きいのは体力の問題です。

多くの仕事は、経験年数が増えてくると人脈が増えたり、仕事を誰かに回せたりして、自分はマネジメントの仕事につくなどできるでしょう。しかし、風俗の収入は、経験やノウハウにではなく、出勤日数によって発生します。指名料は微々たるものです。自分の体を動かせば動かす分だけ発生するのです。

『風俗嬢の見えない孤立 (光文社新書) 』より引用

『風俗嬢の見えない孤立 (光文社新書) 』より引用

『風俗嬢の見えない孤立 (光文社新書) 』より引用

『風俗嬢の見えない孤立 (光文社新書) 』より引用

つまり、若ければ若いほど体力がありますが、年を重ねると体力が落ち、出勤するのが難しくなります。そのうえで、指名する客も若い新人を好む傾向があるので、単価も安くなります。40歳付近でやめざるを得なくなるのです。そういうと、「70歳の風俗嬢を知っている」とか、「熟女ブームだから」と、言い返す人もいるのですが、これはかなりまれなパターンです。

――多くの人は40歳で引退を余儀なくされてしまうと。

角間 そうですね。だからぼくたちは「出口」に注目しています。多くの場合、特に風俗の取材をする人は「入口」を重視しがちです。なぜ風俗嬢になったのか? 彼女の心の闇とは? といった書き方はよくありますね。多くの人たちもなにか特別な理由があるに違いないと決めつけている。でも実際に彼女たちに話を聞くと、入る理由は本当に多種多様です。だから、入口を問うことには意味はなく、みんなが困る出口について支援することが重要だと考えています。

「出口」に問題を抱えている意味では、風俗嬢とアスリートは非常に似ていると思います。入る理由も人それぞれだし、稼げるか稼げないか、プロ意識を持つか持たないかもその人次第。でも、40歳で体力の限界はきて、引退を迎えてしまいます。そこで、誰もが監督になれるわけでもなく、今までやってきたキャリアが有効に生かせるわけではありません。

――セカンドキャリアの問題になってくるんですね。

角間 そうです。風俗を「いずれ引退しなきゃいけない仕事だから辞めた方がいい」としたら、スポーツ選手を目指すこともダメになってしまいますよね。キャリアの応用の利かなさでいけば、ミュージシャンやお笑い芸人だってそうでしょう。ぼくは、キャリアが途絶えても次に行けるのが健全な社会だと思っています。風俗嬢が次に行けるインフラは、アスリートなどのセカンドキャリアが必要な人のためのインフラにもなるのです。

――どのようなセカンドキャリアが想定されているのでしょうか?

角間 ぼくたちは、すぐに辞めさせるような支援はしません。というのも、急に昼の仕事をはじめても、夜の仕事に戻ってしまうからです。風俗の仕事は、昼の働き方と全然違います。風俗は、365日、24時間、いつでも好きなときに数時間働けば、その日のうちに給料がもらえる仕事です。一方、昼の仕事では、朝起きて8時間働き、給料が振り込まれるのは1か月後。「全然お金がもらえない」「風俗の方が楽」とまた戻ってしまうことが多いのです。

ですので、まずは夜の仕事を続けてもらいながら、徐々に昼の仕事に移行してもらう方法を取るのです。インターンシップの機会を提供し、少しずつ昼の仕事に慣れてもらう。また、風俗嬢の多くは昼間に多くの余剰時間があるため、その空いている時間でトライしやすいような資格を取れるようにします。

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山本ぽてと

1991年、沖縄県生まれ。大学卒業後、WEBメディアにて勤務。退職後、インタビュー、構成などで生計を立てる。

twitter:@yamamotopotato

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風俗嬢の見えない孤立 (光文社新書)