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【第4回】トランス男子のフェミな日常 「性別欄をどうしたらよいのか」

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先日ツイッター上で、「男・女・LGBT」という性別欄がもうけられている問診票の画像が話題になった。そのときは何かの冗談くらいに思っていたのだけれど、数日後に、今度は講演依頼をされた先からまったく同じ性別欄をもうける案が送られて来たので、ちょっとびっくりした。

おそらく、この性別欄を考案した人は「人間の性別は男と女の2種類だけではない」ことには気が付いたものの“第三のメニュー”をどのように用意したらよいのか分からなかったのだろう。ここで突如あらわれた新たな選択肢“・LGBT”の中には、自分自身を女や男だと認識している人たちがたくさんいる。ゲイやレズビアンはそれぞれ男や女に丸をすれば済むし、トランスジェンダーだって自分をどちらかの性別で自認している場合もある。むやみに「どちらでもない」といった選択肢をオススメされても困る。「男女どちらでもない」というのは、あくまでもそのように自称・自認している人たち(Xジェンダーなど)の場合にのみ適切な表現だろう。

その後、講演の依頼者には、性別欄は「女・男・その他(   )/無回答」あたりで手を打ったらいいんじゃないでしょうかと提案して、ことなきを得た。もし、読者のみなさんが町中でビミョ~な性別欄を見つけたら、ぜひこの記事を紹介してみてほしい。

性別欄は善? 悪?

性別欄について興味深いのは、しばしば多様な性について学び始めた人々が「そもそも性別を尋ねるという行為自体」にある種の罪悪感や混乱を抱えはじめることだ。ある人は「いちいち性別なんか聞かなくたっていいのに」と言い、別の人は「いやぁ、だけどその、大変申し訳ないんだけど、必要な場面だってあるよね」と苦しそうに言う。別に苦しまなくたって、必要ならきちんと尋ねればいいのにと思う。

たしかに、あきらかに不要な性別欄は存在していて、2000年代には「公文書からの性別記載削除キャラバン」が各地で活躍し、トランスジェンダーたちのプライバシーを守ろうと闘った。ひっそり女性として暮らしているのに投票所にいけば青いランプが点滅する……なんてことはいまだに全国各地で起きており、本人確認のための性別欄はかえって混乱を生じさせ、トランスジェンダーたちを恐怖に陥らせている。いらないものは無くしてほしい。

しかし、性別欄がすべて「悪」なのかといえば、そんなことはない。冒頭では病院の問診表における性別欄について触れたが、米国のLGBTコミュニティに根差した病院では、性別の問いかけはもっと複雑だ。単に「あなたの性別は?」と尋ねるだけでは、トランス男性は単に「男」などと答えて、生物学的性に関連する疾患を見落とす可能性があるためだ。具体的には(1)出生時の性別や(2)現在暮らしている性別、(3)自認している性別、(4)法的な性別などを尋ねるそうだ。一般的な医療機関で同じことはできないかもしれないが、それぐらいの情報を把握しないとトランスジェンダーの患者には十分なケアを提供できないことがある、という教訓にはなる。

今から6、7年ほど前のことだったと思うが、永田町にある国会議員会館の一室で、LGBT団体と障害者団体が同時に居合わせたことがあった。障害者団体の女性たちは、国に対し「性別欄を作ってくれ」と要望していた。障害者の雇用に関する国のデータにはジェンダーの視点が欠けており、性別ごとの統計を取らないと障害者女性の状況はいつまでたっても可視化されないためだ。

性別欄そのものは善でも悪でもなく、必要な情報が安全な形で適切にやりとりされるための方法を考えるのがよいのだろう。2014年、アメリカ版のフェイスブックは50種類の性別が選べるようなサービスを開始したが、私たちが生きているのは、障害者団体の女性が語ったような現実でもある。

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら