近年、注目を浴びているAV出演強要問題。これは去年3月に発表された特定非営利活動法ヒューマンライツナウの報告書を端にしたもので、1年以上が経つ現在も、賛否の声が巻き起こっています。こうした流れを受け、今年3月には、首相官邸でAV出演強要問題および「JKビジネス」の対策会議も開かれました。
そして4月17日、AV制作会社や出演者などに提言や指導を行う「AV業界改革推進有識者委員会」による記者会見が開かれました。大学教授と弁護士の4名が委員を務めるこの委員会は、自己決定権など人権の保証、そしてAV業界の健全化を目的に、4月1日に発足したものです。記者会見の概要はすでに各種メディアで取り上げられています。そこでmessyでは、記者会見の全文文字起こしをお送りすることにしました。アダルトコンテンツを多く取り上げるmessyだからこそ、情報を共有し、様々な性にまつわる問題を考えていきたいと思っています。
AV業界全体を見渡し総点検する
<志田代表委員の言葉>
この委員会は業界外部の有識者のみの第三者で構成することとしております。私自身は、美術大学で教員をしております。表現者のための社会倫理を大学生に教えることを日頃の職業としております。各方面から発せられた被害の情報に付きまして、美術大学の教員として大変心を痛めておりました。今回の第三者による委員会発足につきまして、自分の日頃の仕事の内容からして、これはお引き受けすべき内容と考えてお引き受けしました。
当委員会について、基本的な事柄をご説明させていただきます。当委員会発足のきっかけとしましては、昨年3月に発表されました特定非営利活動法人ヒューマンライツナウの報告書、およびそれに端を発した適性AV業界に対する様々なご指摘、および今年3月に出されました、内閣府男女共同参画会議からの報告を受けまして、これを適正AV業界に課せられた健全化維持に向けた刷新の機会と考え、適正AV業界側による自主的な取り組みとして刷新策の履行を促すために発足した第三者機関が、AV業界改革推進有識者委員会でございます。
業界にはメーカーの団体、出演者の団体、プロダクションの団体、流通の団体および流通の法人などがございます。プロダクションの団体として「日本プロダクション協会」が組成されております。出演者の団体として「一般社団法人表現者ネットワーク」通称「AVAN」がございます。メーカーの団体として「NPO法人知的財産振興協会」があり、通称「IPPA」といわれています。成人向け映像のメーカー二百数十社が所属する組織でございます。流通・販売・レンタルとしましては、販売店の団体であります「NPO法人セルメディアネットワーク協会」や「IPPA」内にも販売店、レンタル店などが登録しております。その他、大手法人としまして、DMM、TSUTAYAなどがございます。これらAV業界の川上から川下までを今一度総点検して問題点を抽出し、それらを改善するための道を開くのが今回のAV業界改革推進有識者委員会でございます。
「適正AV」とは何か
会見では、4月6日に同委員会が発表した提言、基本規則について資料を見ながら確認しました。以下、全文を書き起こし掲載します。
<登壇者>
志田陽子代表委員(武蔵野美術大学 教授 法学)
河合幹雄委員(桐蔭横浜大学 教授/副学長/法社会学)
山口貴士委員(リンク総合法律事務所/弁護士・カリフォルニア州弁護士)
歌門彩(ヤエス第一法律事務所/弁護士)
志田 1ページ、2ページに渡り、委員会からの8項目の提言と基本規則となっております。たとえば、目的では、本委員会は業界外部有識者等の第三者で構成され、業界の健全化を推進するために提言を行い、提言内容を不足なく迅速に遂行するために業界における団体間の連携を促し、同業界が自立的に健全化を推進するための助言および指導を行う。加えて、その指針となる規則を制定し更なる業界の発展と健全化に寄与することを目的とする、としております。続きまして、今回の委員会を組成して進行していく上で言葉の定義というものが大切だと考え、定義をしております。
たとえば、「AV」といいましても人によりましてその意味する範囲が異なっております。ですので誤解がないようにあえて「適正AV」という語句を使用して、違法なものや不適切なものとの線引きをしております。その他にも業界に関係する語句について定義をしております。最後に、業界が守るべき規則としまして第1条から22条までお手元の資料のように定めております。細かな説明は割愛させていただきますが、簡単に主な情報のキーワードを確認させていただきます。第1条は「委員会の役割」について言及しています。第2条は「人権擁護と自己決定権の尊重について」、第3条は「委員会への加盟と健全化への貢献の義務」と続きまして、第6条には「映像制作部における細かなことをルール化」しています。第7条では「各プロセスにおける映像保存による可視化について」、第8条は「模範契約書の作成をし、それによる契約について」第9条では「著作権および二次利用について」の言及がされています。第10条以下の項目では、「出演者からの販売作品に関する問い合わせの対応」、「相談窓口の設置」、紛争発生時の解決する仕組みの設置、つまり「仲裁機関について」、「出演料などの金銭面の当事者間における開示」、「安全健康面の対策」、「出演者の年齢確認の厳格な実施」などがあり、第15条は「コンプライアンスプログラムについて」、第16条は「ゾーニングの決定について」、第20条では「6ヵ月後の法人化を目指す」と書かれています。以上のような22項目が規則として定められております。
本委員会は、テレビ業界でいうところの「放送倫理番組向上機構」つまり「BPO」をイメージしております。業界における規則や標準契約書などを策定し、6ヵ月後に法人化したあとは、その実行状況をチェックし監督する期間となります。あえて言えば、AV版のBPOに近い存在となってまいります。以上、今回の提言、基本規則につきましての簡単なご説明をさせていただきました。