社会

前川前文科次官「出会い系バーで貧困調査」報道に必要なのは、事実の検証であり人格評価ではない/『彼女たちの売春』著者・荻上チキさんに聞く

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出会い系バーはどのような仕組みなのか

――出会い系バーでは必ずしも売春が行われているわけではないのですね。

荻上:間違ってほしくないのですが、出会い系バーは、業者が女性を囲って行われる「管理売春」ではありません。ですので、行っても交渉決裂になることもありますし、めぼしいマッチングに恵まれずただ帰ることもあります。店に行った=買売春した、とはなりません。「バー通い」だけだと、どの行為なのかを外形的に判断はできないですね。

店側は女の子と契約しているのではなく、あくまでも交渉の場を提供している。トークルームの壁には、「売春交渉はやめてください」と書いています。とはいえ警察に対して「書いているよ」と言い訳するために用意してある程度で、暗黙の了解で、店員も把握しています。

分かりやすいのは、女性は最初のうちは茶飯だけで稼ごうとお店に通うものの、男性客の入れ替わりが少ないこともあって「あの子は茶飯だけだよ」と噂になってしまい、声をかけられなくなることがあります。そんなときに、「ワリキリをやったら儲かるよ」と店員がアドバイスしたりします。もちろん、店員個人のアドバイスであり、店として助言するという格好にはなっていないのですが。

――「出会い系バー」と「出会い系喫茶」はなにが違うのですか?

荻上:今回話題にあげられている「出会い系バー」は、「出会い系喫茶」の補完物として出てきました。出会い系喫茶は、2010年に風営法の対象になり、深夜営業ができなくなったので、バーという形態の店を別に作り、深夜客をそちらに誘導したんですね。ちなみに店側は、「出会い系バー」と名乗っているわけではありません。

――出会い系サイトではなく、出会い系バーや喫茶を使うメリットはどこにあるのですか?

荻上:出会い系サイトはアポイントを取るために手間がかかりますし、すっぽかされることもあります。女性側からすると、サイトだと相手の素性がわかりません。喫茶だと店内で嫌なことをされても、「助けて」と言えますし、相手の様子をみて断ることもできます。また喫茶では出会ってから外にでるので、喫茶でおやつを食べたり、漫画を読んだり、髪型を整えたりする間に、トークが入ったりします。営業努力が軽く済みます。ハウジングプアの女性が1割近くいるのですが、家のない女の子の場合、雨風がしのげます。男性側も、顔をみて指名することができるメリットがあります。

――荻上さんは、前川氏が通ったと言われるバーでも取材をしたことがあるとおっしゃっていましたが、どのようなお店なのでしょうか?。

荻上:出会い系店舗はおおむね「マジックミラー型」「セパレート型」「ウォーク・イン型」の3つのタイプに分けられるのですが(注)、今回のお店はセパレート型です。店が薄暗くなっていて、「あの子に声をかけたい」と男性がスタッフに伝えます。そしてトークルームに行く。トークルームでは5分~10分の時間が与えられ、交渉が成立すると店をでます。

――マジックミラー越しに女子高生のスカートをのぞくような場所ではないと。

荻上:それは「JK見学」系ですね。一部でそうしたイメージが流布されましたが、形態としてはまったく異なるものです。

出会い系バーと貧困

――前川氏は、女性の貧困を扱った番組を見たことをきっかけに、実際に足を運び、出会い系バーの女性たちに話を聞こうと思ったと話しています。出会い系バーと貧困に結びつきはあるのでしょうか。

荻上:まず断っておくと、店にいる女性の全員が貧困とは限りません。生活には困らないけれども、なんらかの目的のために貯金をしていたり、働き方としてマッチしているとか、割がいいからといった理由で来ている人もいます。

ただ、貧困状態にある人は割合的に多いです。詳しいデータは『彼女たちの売春』や『夜の経済学』などの本に載せていますが、住処の貧困であったり、DV被害者だったりする人が平均よりも多い。困難な状況に立たされている人たちは、手っ取り早くお金の手に入る日払いの仕事を求めます。24時以降に居場所がない場合、あるいは24時以降も客を取りたい場合の選択肢として、出会い系バーに流れて時間を過ごしている現状があるので、その意味では、喫茶よりバーに行った方が貧困の実相を知りやすいかもしれません。

前川氏が通っていた店を知っているので、率直な感想として「コアな店に行ったな」と感じました。歌舞伎町にはもっとメジャーな出会い喫茶チェーン店がありますから。

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山本ぽてと

1991年、沖縄県生まれ。大学卒業後、WEBメディアにて勤務。退職後、インタビュー、構成などで生計を立てる。

twitter:@yamamotopotato

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