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いくら頑張っても生活が良くならない労働者に、「頑張れ」とエールを送っても何も改善しない

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Photo by hiyang.on.flickr from Flickr

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OECDが五月に発表した労働生産性に関するレポートで、日本の労働生産性がG7最下位だということが判明しました。そして5月24日には労働生産性の向上を目指し、サービス業に「カイゼン」のノウハウを共有するため、企業や業界団体のトップなど300人が集結した会合が首相官邸で開かれました。「カイゼン」とは、ジャパンアズナンバーワン時代の80年代に、日本の製造業の重要な要素として知られていた、製造業の生産現場で行われている「作業の見直し」活動のことです。しかし、いまさら「カイゼン」ノウハウを共有することで生産性を上げようという発想自体が、あまりにも時代錯誤かつ非生産的です。

現代の経済成長、企業の成長には、労働者が「頑張って働く」ことよりも「スマートに働く」ことの方が重要です。にもかかわらず、日本ではあいかわらず、「頑張って長時間働く」という慣習をずるずると続けてしまっています。

先進国で利益を生み出すことができるのは、人々の常識や生活スタイルを変えるような「社会変革」だけです。そのためには「スマートに働く」労働者、つまり頭脳労働が不可欠です。頭脳労働というのは、「カイゼン」に代表されるような、“いかに効率よく、無駄なく働くか”ではありません。頭脳労働で生み出す価値とは、新しいアイディアやテクノロジーであり、さらには社会の常識や人々のライフスタイルやニーズそのものを変えてしまうような、新しいビジネスモデルです。つまり「スマートな働き方」とは社会的イノベーションを起こす働き方のことなのです。

労働生産性の低さや長時間労働が「過労死」とともに世界的にも悪名高い日本でも、労働生産性は伸び続けています。問題はどんな理由であれ上昇した労働生産性によって生み出された利益が労働者に全く還元されない、どんなに働いても評価されないという環境にあります。企業に搾取されながら、それでも我慢して働き続けているのが日本の労働者なのです。

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古谷有希子

ジョージメイソン大学社会学研究科 博士課程。大学院修了後、ビジネスコーチとして日本でマネジメントコンサルティングに従事したのち、渡米。公共政策大学院、シンクタンクでのインターンなどを経て、現在は日本・アメリカで高校生・若者の就職問題の研究に従事する傍ら、NPOへのアドバイザリーも行う。社会政策、教育政策、教育のグローバリゼーションを専門とする。

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