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美容誌「VOCE」炎上記事は、無批判に「若くてキレイな女が一番高価値」の前提を容認・強化してしまう

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「VOCE 2017年 07 月号」講談社

「VOCE 2017年 07 月号」講談社

美容雑誌「VOCE」(講談社)の公式サイトに掲載したある記事が批判を受けて削除された。くだんの記事タイトルは『女の市場価値はいくつまで?「男は普通の27歳と美人の33歳、どっちと付き合いたい?」』というもので、恋愛メディア「ハウコレ」などに執筆している“恋愛プロデューサー”なる肩書きの女性が寄稿したものだった。要約すると、「独身生活を謳歌して結婚を先延ばしにしていると、30代後半になって嫁の貰い手がいないことに気付き超焦るよ!!!」という脅し系記事なのだが、当然、炎上。VOCE公式Twitterアカウント(@iVoCE)の記事紹介ツイートに批判的なリプライが複数ついている。

不思議なのは、この記事ではタイトルにもある「普通の27歳と美人の33歳、どっちと付き合いたい?」という質問に対する「男」の回答として紹介されているのが「これは普通の男100人に聞いたら97人は33歳の美人って答えるんじゃないですか。27歳と33歳だと差はほぼないですね。33歳の美人なら男性からのお誘いも減らないでしょう」であること。つまり「普通の27歳と美人の33歳なら、美人の33歳の勝ち」としているわけだ。しかし、「38歳の女性とこれから結婚するとしたら、子供のことを考えると猛スピードで色々進めなきゃ」だそうで、「30代後半になると美人でも厳しい。結婚したいなら早めに動こう」との結論で記事は締め括られている。ちなみに20代でも「ブス」はダメなのだそう。美容雑誌が「ブス」をそのままでいいよと肯定することは有り得ないのだろうが。

@iVoCEは批判を受けて次のようにツイートを更新。

「今回の記事の件、不愉快にさせてしまった方がいたこと、心よりお詫び申し上げます。記事は削除させていたたき、今後はVOCEに相応しい記事制作を強化していく所存です。今後ともVOCEをご支援いただけますよう、よろしくお願いいたします」

確かに不愉快な記事ではある。しかし「読者を不愉快にさせたからNG」というわけではない。たとえばmessyの「痴漢するな」という記事を読んで不愉快になる読者もいるだろうし、「熟年男女もセックスしている」という記事を読んで不愉快になる読者もいるだろう。しかしそういう記事を「不愉快だという反応があった」という理由で削除することは通常ない。どこの媒体もそうであろう。謝った情報を掲載していたり、情報を発信する立場として不適切な見解を広めようとしたことが、記事取り下げの理由になる。

今回の記事における「不適切な見解」は、一言では示せない。女性の価値は男性の結婚対象から外れると一気に下落すると印象付けるような書き方も(年齢に関わらず、若くても「ブス」は価値が低いとされている)、読者層である女性へのセクハラに無自覚であることも、エイジズムとルッキズムに支配されたものの見方を助長していることも、問題である。美しくなければ価値がない、若くなければ価値がない、結婚できなければ価値がない……確かに化粧品業界にとって、美しくなろう・若々しく見られよう・キレイになってモテようという意欲の薄い女性は価値がないかもしれないが、そのことと個人の在り方とは別問題だ。

筆者がもっとも残念なのは、そうした「買わせよう」戦略や購買意欲を煽る意図なしに、無意識にこの記事が作成されたであろう点である。無批判に「若くてキレイな女が一番高価値である」という言説を受け入れ、その正当性を疑わず、内面化している。そういう“女性”は、実際に、たくさんいるだろうと思う。誰がどれだけ「そのようなものの見方で人間をはかるべきではない」と学級委員のような指摘をしても、国会でもテレビでも週刊誌でも「そのようなものの見方」が前提として共有され、無批判に展開されているのだから仕方がないのかもしれない。“国のエライ人”も、マスに届くメディアも、女はそういうものだという前提を崩そうとはしないし、だからマスを対象にした商品を展開する大手企業の広告で似たような“炎上”が次々に起こって止まない。社会全体で「不適切な見解」を適切なものとして共有している。日本はそういう段階だと言って差し支えないだろう。そして「現状で何も不都合がないのに、考え方を変える必要がどこにある?」という意識すら広く共有されているように思える。

ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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