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「稼げる職種」であっても、どうして女性よりも男性のほうが平均年収が高いの?

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「PRESIDENT WOMAN」2017年7月号

「PRESIDENT WOMAN」2017年7月号

『プレジデント ウーマン』20177月号(プレジデント社)に、「女性が稼げる」仕事ランキング、という記事が掲載され、web版のプレジデントオンラインにも転載されている。

2015年に創刊された『プレジデント ウーマン』は、「ビジネスシーンにおける女性の強み、女性ならではのマナーや振る舞い、男社会に踏み込んでいく精神力。家庭やプライベートにおける、働く女性ならではの悩みなど、これまでのビジネス誌や女性誌にはなかった切り口で、ビジネススキルや仕事と人生の満足度を上げるノウハウが満載」(プレジデント社会社概要より引用)の、働く女性の中でもとりわけ高学歴・高収入のハイスペック女子をターゲットにした雑誌といえる。Noスペック、しかもフリーランスの私にとっては「自分とは違う世界の人たちのための雑誌」というイメージで、Webに転載された記事をたまたま目にして衝撃を受けることもある。

今回の記事に掲載されている、厚生労働省の調査を元に作成したという<女性の職業別平均年収ランキング>でトップ3に輝いたのは、1位:航空機操縦士(平均年収12064400円)、2位:医師(10815400円)、3位:大学教授(1021600円)。このトップ3だけが1000万を超える職種で、4位以下に弁護士、大学准教授、歯科医師、公認会計士/税理士、記者、航空機客室乗務員、大学講師と続く。いわゆる「稼げそうな職種」のイメージを裏切らないランキングである。

注目したいのは同時に掲載された<職種別平均年収ランキング>(転職サービス「DODA」の情報を元に作成されたもの)のほうだ。こちらは男女別の年収が発表されているが、1位~10位どの職種でも軒並み、男性>女性の図式がキレイに成立している。たとえば1位:運用(ファンドマネージャーなど)は男性:784万/女性:691万で93万の男女差がある。3位の投資銀行業務にいたっては男性:868万/女性:570万で298万もの開きがあるし、4位のMRも男性:754万/女性:561万で193万も差が見られる。会社の上層部に位置する経営企画、事務部門を統括する事務企画でも男性:723万/女性:520万と203万の開き。同じ職種でも男性と女性でここまで給与額が違ってくるのはどういうわけか?

記事内には「これは女性の管理職比率が男性より低いことが一因」とあり、無論それは事実であろう。だから「稼ぎたい人は、上の役職を目指しましょう」と助言が入ることになるし、稼げる女性は「スーパーウーマン」と呼ばれるようになる。他方、稼げる男性が「スーパーマン」呼ばわりされることはないけれど、高年収を稼ぎつつ家事育児を妻と分担する男性がそれに該当するだろうか。

あくまでも数字は「平均」でしかない。一般職でも勤務先によっては年収500万以上を得る女性もいる。総合職を目指したいとは思わない女性もいるし、みんながみんなスーパーウーマンになんかなりたくないだろう。しかしそもそもこのランキングに載るような職業・職種の女性は、質の高い教育を受けた優秀な人材だ。保護者の経済力に加えて、本人がやる気を持ち落ち着いて勉強できるような家庭環境だったり、本人の希望や適正と向き合う学校教師だったり、進学・就職に関する情報リテラシーだったりも持つ、実力と運を兼ね備えた人たちと言ってもいいかもしれない。そういう女性たちが「上を目指さない」ことは全体にとっても損失だろう。でも目指さない、「目指せない」現状がある。

スーパーマンゾーンに足を踏み入れ、そこに踏みとどまろうとすれば、女性はそこにいる男性以上の犠牲を払うことを当然視される。特に妊娠・出産・育児・介護といった個人の事情(家庭内の労働)と、高賃金を得られる仕事との両立が困難なことは明らかだ。保育園の待機児童問題や夫婦での家庭内労働分担がクリアできたとしても、長時間労働が必須だとするとやっぱり難しい。長時間労働はできない、残業もムリ、子供の病気などで急遽欠勤する、そもそも仕事と育児の両立でクタクタとなれば、女性自身が管理職になりたくないと考えるようになるし、企業側も女性の管理職選出を躊躇する。

教育投資を受け、一流大学を卒業し、年収の高い仕事に就いた女性であっても、結婚・出産がきっかけで管理職の道が閉ざされる、時短勤務を選んだことで重要な仕事は任されなくなる、ひどい場合は退職を余儀なくされる、前職より条件の良い転職先が見つからなくてパート勤務となる……だから高い教育を受けても女性は男性より稼げなくなっていく。こんなの今さら発見したようなことではなくずっと前からわかりきっている負のスパイラルで、すでに長時間労働を是正するなどこの課題をクリアして女性管理職を増やしたカルビーのような企業もあるが。

私は職業・職種ともにランキング入りするような「稼げる仕事」に従事していない。なにしろフリーランスだ。「稼げる仕事」ランキングの女性の年収は、私よりはずっと上だ。同職種の男性より平均年収が低かったとしても、世の労働者全体からみると悪くない年収。だけど「稼げる仕事」に就けた数少ない女性たちが、足踏みを余儀なくされたり、マミートラックにのせられたりすることは、本当にもったいないことだと思う。採用試験の段階では、男性より女性が優秀という話があちこちで出るのに、だ。それって、女性は男性に比べて努力が報われにくいということになるのではないか? 逆に男性にしてみれば「女はトップに立てなくても家庭を言い訳にできるから羨ましい」のかもしれないが。

ただでさえ難関の「稼げる」仕事に就いた優秀な女性が、家族を持つことを決めたときに、不利になる、デメリットを被ることは、繰り返しになるが社会全体で見ても損失だろう。私はその立場にいないけれど、一人の働く親として、元会社員として、長時間労働に適応することは難しいと痛感している。そもそも教育投資を受けず、「稼げる」仕事に就けない女性の貧困ももちろん社会問題であるが、『プレジデント ウーマン』読者のようなハイスペ女性であっても上を目指せない構造が維持され続けている。安易に女性個人の努力や頑張りに委ねてはいけないものだと思う。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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