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【第10回】トランス男子のフェミな日常「多様性と引き算」

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endorensai0630

先日、友人と喫茶店で話をしていて、なりゆきで「トランスジェンダー・フレンドリー企業ランキングTOP3」を決めることになった。策定者は私で、すべて独断と偏見によるものである。

2017年初夏、この栄誉あるのかわからない賞に輝いたのは下記のラインナップだった。じゃーん!!

1位 ファミリーマート
2 Amazon
3 qなんとか、という1000円カットの店

3位においては、後日店名が「QBハウス」であることが判明したという杜撰さだ。でも、なりゆきで決めたので許してほしい。下記が表彰の理由である。

<第1位:ファミリーマート>
外出先で見つけるとホッとする。なんといっても「トイレ」がしれっと使える点が素晴らしい。

ファミリーマートでは、男女兼用トイレが設置され「どなたでもご利用ください」と書いてあることが多い。しかも結構広めで、車いすや子ども連れの人が使える場合もある。どうやら多目的トイレの設置を、店の経営戦略の中に位置付けているようだ(http://www.asahi.com/sp/articles/ASK5J43DJK5JULFA00M.html)

トランスジェンダーの中には、男女別に分かれたトイレでも難なく入れる人もいるが、私のように外見の性別が「男にも女にも見えてしまう」ないし「100パーセント男にも女にも見えない」という人間の場合には、外出時にどこで用を足すかというのは極めて深刻な問題だ。自分の場合、男子トイレに入るのには男としてのパス度に自信がなく、人が多いときなどにはなんとなくビビってしまう。とはいえ、女子トイレに入るのは苦しい。だからこそ、しれっと使える男女兼用トイレは、何も考えずに用を足せるオアシスのような場所だ。

わざわざLGBT用トイレとネーミングされたり、レインボーサインをつけたりすることもない無造作さがいい。なにかを主張したいのではなく、なにも主張せずに用を足したいのだから。

2位のAmazonは、サイズの小さいメンズ服でも検索で見つけやすいのが素晴らしい。「白いシャツ XSサイズ」検索で、探しているものが見つかるなんて奇跡だ。たいていの店は「XSサイズ砂漠」なので、LGBTフレンドリーなイメージを打ち出しているGAPでも、実店舗に行くとキッズコーナーに行くしかない。

トランス女性の場合には「サイズが豊富」という同じ理由で、ビッグサイズが豊富なサカゼンを推す人もいるが、デザインがあまりないんだとか。その点、Amazonは選べる種類が豊富だし、さらに店員との「恐怖のコミュニケーション」を省けるので加点される。恐怖のコミュニケーションとは、自分用にネクタイや下着を買っているのに、店員さんに「プレゼント用ですか?」と声かけされるアレである。こ、こっち来ないで!!

3位のQBハウスは、これも店員との恐怖のコミュニケーションが回避できるし、会員カードを作らなくても済む。会員カードって名前や性別を書く欄があって面倒なんですよ。

こうして並べてみると、買い物やおしゃれの楽しみとは縁遠い筆者のライフスタイルがバレてしまったようだけれど、言いたかったのはユニバーサルデザインには「足し算」だけではなく「引き算」も大切だ、ということだ。

昨今「LGBT市場」について注目している企業が多い。ビジネス誌では、LGBTの人々の潜在的なニーズや好みを把握して、新たな顧客獲得をしようという特集記事が組まれている。『週刊ダイヤモンド』によれば、国内のLGBT市場規模は5.7兆円。もはや桁がデカすぎて、どれだけ多いのかよく分からない。でも、このような特集に胸躍らせる企業も多いらしくLGBTフレンドリーな広告を出している高級車や、レインボー色の靴だとか、いろんなものも売り出されている。

選択肢が増えることはいいことかもしれないが、フレンドリーなイメージよりも利便性のほうが魅力的だ。今のところ私はファミリーマートでトイレを借りて、龍角散のど飴でも買っておこうと思う。

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら