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男性も家に帰りたいんじゃないですか? ワンオペ育児にならざるを得ない社会から、子育てを許容する社会へ

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Photo by Olaf Gradin from Flickr

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ひとりの親がワンオペレーションで育児と家事をこなす、「ワンオペ育児」。この「ワンオペ育児」という言葉が広まったのはわりと最近(去年~今年にかけて)の話で、今年5月にはユニ・チャームの紙おむつ「ムーニー」のCMがあたかもワンオペ育児賛美しているようだとして批判の声が上がりました。

とはいえ、ワンオペ育児自体は今に始まったことではなく、核家族化が進んだ20世紀後半の時代においては多くの家庭で「それが普通」のことだったのではないでしょうか。ただし「普通」だから放置されてきたとも言い切れず、はっきりした定義付けがなくとも常に疑問視・問題視はされていた印象があります。たとえば「育児ノイローゼ」という言葉は私が小学生の頃にはすでにあったように思うし、近年では「産後うつ」とか「密室育児」とか「母子カプセル」とか「児童虐待」とか「産後クライシス(出産後の夫婦関係悪化)」とか、どれも要因のひとつとして指摘されているのは、育児・家事の負担がひとりの親に集中しすぎていること(=ワンオペ育児)。この国の妊娠・出産・育児にまつわる諸問題(止まらない少子化も含め)の核に、「ワンオペ育児」問題がある……とまで言ったら大袈裟でしょうか。

何年も続く緊張感がきつい

ワンオペ育児のリスクとして挙げられているのは、まず単純に、育児担当親の負担が大きいこと(多くの場合、母親が担当していると見られています。父親とか祖父母がワンオペ育児担当の家庭もあるかもしれません)。自分しかやる人がおらず分担できないとなると、必然的に一日24時間のうち多くを「育児用の時間」として割くことになります。共稼ぎの場合、仕事をする時間、そしてを寝る時間などの休息、自由に過ごせる余暇の時間が少なくなります。子供を監護する責任も、その場ではひとりの大人にのしかかります。子供の年齢や状況にもよりますが、子供は親の都合のいいように動かないし危険行為だってやりかねないわけで、だから一緒にいる親はある程度、緊張せざるを得ません。その結果、肉体的負担のみならず精神的負担が大きくなります。

また、もしワンオペ育児をしていた親が病気で倒れれば、ずっとノータッチだったほうの親は子供のことをほとんど把握しておらず途方に暮れるでしょう。ワンオペ育児は危ういバランスで成り立っている、不安定な育児環境ともいえます。

とはいえ、そうした家庭ではワンオペ育児せざるを得ないから、そうなっているのが現状です。シングル親だったり、単身赴任だったり、片方の親が長時間労働で帰りが遅かったり、実家が遠かったり。平日は母親のワンオペで土日祝は夫婦で育児・家事を分担、という家庭もあると思います。

私自身のワンオペ育児

かくいう私自身、未婚で産んだし実家も遠いので、ワンオペ育児真っ最中です。仕事をしているから平日朝~夕方は子供を保育園に預けていますが、土日祝日は文字通り四六時中子供と一緒にいるしかありません。大変だったし、今も大変だし、今後も当分大変だと思います。二歳の娘は近頃、私がただ寝転がっているだけで「起きて!」とクレームをつけてきますし、寝かしつけの時も自分は横になっても私が横になるのは嫌なようでやっぱり「ママ起きて!」と言ってきます。子供を寝かしつけながら、自分もそのまま寝ちゃいたくなることもありますが、一旦起きて洗濯物を畳んだり干したり、明日の保育園の用意をしています。子供が起きている間は危なっかしいことも多く、日々ヒヤリハットの連続で反省と自己嫌悪を繰り返しています。ワンオペ状態には慣れましたが、生理期間中は嫌ですね。トイレに立ち入られるんですよ? 特に生理痛が酷い時はイライラします。

でも実は、ワンオペマジ嫌だ~って心底思うのは、私の場合、その時だけなんですよね。ひとりで全部やるのは大変だけど、未婚で産むと決めた時点でわかっていたことで、誰にも口を挟まれないしケチをつけられない、言ってしまえばことごとく自分の好き勝手にやれます。もちろん自分が全責任を負わなきゃいけないし、食事とかお風呂とか歯磨きとかどんなに面倒でもやらなければいけない(と自分で決めている)ことはありますが、ここは手抜きするとか、ここはきちんとやるとか、全部を自分および子供のペースで進められるのは、精神的には楽でもあります。具体的には、食事を作りたくない気分だったら作らずにコンビニとかスーパーの総菜で済ませればいいし、2日続けて似たようなメニューでも差し支えないし、洗濯も掃除もやりたくなければやらなくていい(いつかはやるしかないけど)。夫なる存在と暮らしていたらそうはいかなかったんじゃないか……と思います。共に生活する以上、夫のペースとか好みとか価値観を一切考慮しないってわけにはいかないだろうし、気遣いも必要になってきますよね。育児方針が合わなくてケンカになることだってあるかもしれません。まあ、子供がもう少し大きくなれば、「2日続けて似たようなメニューとかありえない」等、子供から文句言われるかもしれませんが。現状で一番辛いのは、育児以外のことで自分に余裕がなくて、育児に対しても余裕を持てなくなっている時ですね。

そう、ワンオペ育児で何がつらいかというと、妊娠に際して一緒に喜び合い、産んで育てようと決めた相手と暮らしているはずなのに「どうして私ばかりが育てているの?」という、この理不尽ではないでしょうか。たとえば一緒に暮らしていているのに夫が家事・育児にノータッチ、存在しているのにノータッチ、ゆえにワンオペ育児をこなし責任と負担を負うのは、パートナー不存在でのワンオペ育児とはまったく次元が異なると思うのです。ふたりでやるべきことをひとりでやっているのと、ひとりでやるしかないことをひとりでやるのとは違います。特に精神的負担に関しては、ふたりでやるべきなのにひとりでやっている分、パートナー不存在でのワンオペ育児よりも大きく感じられるのではないでしょうか。その精神的負担の大きさこそが、ワンオペ育児最大の問題だと、私は考えます。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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