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【第11回】トランス男子のフェミな日常「必要なのは『セルフLGBT検定』でしょ?」

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先日ツイッター上で、一般社団法人「日本セクシュアルマイノリティ協会」による、検定料42,984円(税込)の「LGBT検定」に対して批判が殺到した。批判の内容はこちらにもまとまっているが、コミュニティの中で知名度の高くない人たちが、高い金額で、しかもよくわからないコンテンツを「これが検定です」と売ることに対して反発が起きるのは、ある意味ではやむをえないだろう。

「日本セクシュアルマイノリティ協会」という響きのゴージャスさたるや、まるでセクマイコミュニティの代表格といった印象を与えるが、こういうのは「言ったもんがち」であって、実際のメンバー数はそれほど多くなく、またしっかりした体制が整っていないことも多い。私は実際に、この協会の人たちと何度かやりとりをしたり、活動でご一緒したことがあった。当時の彼らの印象としては「高校のアマチュア無線部」のようなノリだった。素朴な人たちがニコニコと、マニアックな部活を数人でのんびり回しているような。

だから、このような検定商法を派手に打ち上げたのにはちょっと驚いた。ホームページ上の「LGBT検定中級」のところに記載のある全国心理業連絡会の人たちとコラボしたことで方針が変わったんだろうか。

この手の検定ビジネスは、実はこれが初めてではない。高齢者や障害者などへの「マナー」を検定する「ユニバーサルマナー検定」などもLGBTを扱っているようだ。ただ、こちらも内容については不安である。実施団体の日本ユニバーサルマナー協会のホームページをのぞくとLGBTについて「性に特徴のある人」として解説されている。え、ちがくね?

微妙な検定によって、微妙な人たちが「検定もっているから理解者です」などとドヤ顔をしていくなら、それは悪夢としかいいようがない。検定商法のネタにされるのも気持ちいいことではない。しかし、多様性について一定の知識や態度を身につけるプログラム自体は、きちんと組まれれば有益なものだと私は思う。むしろ昨今の混沌は、多様性について私たちがどのよう捉え、学べばよいのかというモデルが、フリーでみんなに行き渡らないがゆえに起きていることだとも思える。

先日、カナダのトロント在住の友人キャシーに「レインボー・ヘルス・オンタリオ」という団体のウェブサイトを教えてもらったここには医療関係者に向けたプログラムが無料でごろごろ転がっている。たとえばこんなクイズがある。

質問: LGBTQ女性と接するベストな方法とは、自分の偏見は脇に置いておいて、その人を他の患者とまったく同じように扱おうとすることですね?

答え: いいえ。多くの人はジェンダーや性的指向について偏見を持っていて、それをないことにするなど不可能です。むしろ、偏見があることや、偏見があなたの患者と接する際にどのような影響を及ぼすのかについて自覚しましょう。

無くなることのない偏見の自覚こそが重要だというメッセージは、同じプログラムと言っても、大金をもらって誰かに権威を与えることとは対極的だ。本当に必要なのは、第三者による検定を求める人ではなくいつでも自分を問いなおせる人、いわば「セルフLGBT検定」ができる人ではないだろうか。

私もカナダの団体のように、無料で考えさせるコンテンツをもっと日本に広めたいと今回の騒動で改めて思った。日本セクシュアルマイノリティ協会の人たちが、考えを改めてくれるとよいのだけれど。

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら