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『ひよっこ』ヒロイン・みね子たちの未来? 「自分の人生」を取り戻す7人の女性『サニー 永遠の仲間たち』

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(C)2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

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『サニー 永遠の仲間たち』は韓国で2011年に、翌2012年に日本で公開された、高校時代をともに過ごした仲間たちのその後を描いた映画です。

仲間たちは、ラジオDJからボビー・ヘブの名曲にちなんだ「サニー」というチーム名をつけられた7人組。彼女たちは、とある事件をきっかけにバラバラになってしまいますが、病気になったリーダーのチュナとたまたま同じ病院に母親が入院していたメンバーのナミが再会したことで、サニーのメンバーがまた集結するという物語です。

ストーリーは単純に見えますが、女性が友情とともに自分の人生を取り戻す過程を描いた物語でもありますし、そこがぐっとくる所以です。

叶わなかった彼女たちの夢

現在のサニーのメンバーたちは、一見幸せそうでいても、それぞれにままならない人生を送っています。ナミは夫の仕事は順調でお金にも不自由はしていないけれど、子供は反抗期で、少しだけどこか物足りなさを覚えています。チャンミは生命保険会社での営業成績がふるわず、昔は口の悪さで喧嘩の戦力だったジニは角を隠してお金持ちの浮気男と結婚。歯医者の娘で逆玉の輿とも言われていたクムオクは質素な家で暮らす専業主婦になり、姑に縛られています。誰からも愛されていて、ミスコリアを夢見ていたポッキは親の借金が理由で望まぬ水商売の世界に入り、娘とも離れ離れに暮らしています。サニー1の美人で、雑誌の表紙を飾るほどのアイドルだったスジは消息すらもつかめません。

その中で、唯一、チュナだけは学生時代の夢だった男社会の中で成功するという夢を叶えて経営者になっているわけですが、病気で余命いくばくもなく……運命の皮肉さを感じます。

でも、チュナは映画の中で「また人生の主役になれた」と語ります。これは、チュナだけでなく、サニーのメンバー全員に共通するテーマでもあります。

サニーのメンバーには、それぞれに夢がありました。ナミは絵が上手で、画家か、欲を出せば女優にだってなりたかったし、チャンミは二重手術で美人になりたいと語っていたし(映画ではそれ以上は語られていませんが、美人になって成功を掴みたいという意味でしょう)、クムオクは作家になりたかったし、ポッキはミスコリアの後は素敵な旦那さんと結婚してみんなに愛される女性になりたかったし、スジはモデルのようなことをすでにしていたし、その先も活躍を目指していたことでしょう。

しかし彼女たちの夢は、チュナ以外には叶わぬ夢でした。

これは、サニーのメンバーだけの話ではありません。高校卒業後のサニーのメンバーたちに何があったのかは詳しくは書かれませんでしたが、社会や世間が、彼女たちが自分の人生を歩むことを許してこなかったことは容易に想像できます。女性が自分の人生を歩めないということは、それだけで、フェミニズムとしての問いが描かれているということも伝わってきます。

「自分の人生」を生きられているか

ここからはネタバレになりますが、高校時代、サニーの面々は文化祭の日に、みんなでお揃いの衣装を着てチーム名の由来でもあるボビー・ヘブの「SUNNY」を踊る準備をしていました。けれどそれは、ある事件のせいで叶わぬことになってしまいます。その後は、事件のこともあって、7人は再会することなく暮らしていました。

この歌えなかった「SUNNY」と、叶わなかった夢は、物語の中で繋がっています。そして、この物語には、韓国人の持つ「恨」の感情が非常に濃く描かれているなと感じました。

「恨」は“恨み”と読めてしまうため、怖い言葉のように感じる人もいると思いますが、韓国でいう「恨(ハン)」には様々な意味があって、なかなか日本で暮らす私たちには理解がしにくいものだと思います。古田博司さんの『悲しみに笑う韓国人』(ちくま文庫)という本には、「『恨』はうらみではない、恨はいまでも、諦めることのできぬ一つの夢なのである」と書いてありますし、また韓国の有名司会者のキム・ジェドンは、歌手・Rainのドキュメンタリー『HIP KOREA』の中で、「叶わずに持ち越してしまった思い」だと語っています。

チュナは「自分が成功してサニーのみんなの面倒をみたい」という夢(恨)を持っていました。そしてそれは、自身の病気という悲しいきっかけではあるけれど、ある方法でサニーのメンバーにチャンスを掴むスタートラインに立たせることで叶えることができました(その方法は、日本で物議を醸した部分でもあるのですが、ナミやジニには贈っていないことから、チュナが与えたかったのは“チャンス”だったことがわかります)。

そして、メンバーたちの叶わなかった夢=なりたかった自分になること、自分の人生を生きること、自分が主役として生きること、主体性を持つことと、もう一つの叶わなかった夢=学芸会で踊ることのできなかった「SUNNY」を踊ることが重なったとき、涙を流さずにはいられませんでした。

私が感動したのは、誰しもが、自分が主役の人生を生きられていないのかもしれないという気持ちを抱いているからのような気がします。もしもナミのような幸せな家庭があったとしても、です。

余談にはなりますが、『サニー』を見ていると、現在NHKで放送中の朝ドラ『ひよっこ』のヒロイン・みね子(有村架純)や、みね子が働く乙女寮の少女たちを思い浮かべてしまいます。家の事情や時代のせいで、自分の思うがままではないけれど、それでも懸命に生きている少女たち。彼女たちは、『サニー』のように40代を迎えたとき、どんな思いを抱えて生きているのでしょうか。
(西森路代)

西森路代

ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクショ ン、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、 TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

twitter:@mijiyooon

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