取手くんに全女子燃ゆ『あすなろ白書』
木村拓哉さんの出演した“月9”作品を辿っていく本連載、一発目は1993年放送の『あすなろ白書』(フジテレビ系)から回想したいと思います。本作は、彼の“月9”初出演作品で、当時はSMAPとしてデビューしたばかり。CDがなかなか売れなかったり、同局『夢がMORIMORI』(1992年)でコントに挑戦したりと、いわゆる不遇の時代に居たはず。そんな中でトレンディドラマに出演したキムタクは「え、ちょっと、新種のいい男じゃん……」と女子に新たな希望の光を射し込んだのです。
“園田なるみ(石田ひかり)、掛居保(筒井道隆)、取手治(木村拓哉)、東山星香(鈴木杏樹)、松岡純一郎(西島秀俊)の5人は青教学院大学の『あすなろ会』で出会った学生グループ。恋や家庭、育った環境などそれぞれに思いを巡らせながら青春時代を過ごしていく。なるみは掛居に思いを寄せて一時は恋人に。そして、そんななるみに片思いしていたのは、取手。交通事故で命を落としてしまう松岡の子どもを身ごもっていたのは、星香。一点に繋がることのない思いが錯綜していく。”
キムタクの演じた取手治は、黒ブチ眼鏡がトレードマーク。一見、ごく普通の学生ですが、なるみに横恋慕して尽くしまくります。掛居に気持ちがあると知りながらも、何度も何度も頑張って自分を猛アピール。彼氏という称号を与えられていないのに、ひたすら陰で見守る姿は星一徹の姉のようでした。
そして主演食いをする衝撃シーンが訪れます。
「……オレじゃだめか?」
背後からなるみを抱きしめて告白する取手。今でいう壁ドンに匹敵する名ワザ『あすなろ抱き』で、二番手男の魅力を全開にしたのです。それまでは、空港で真正面から抱き合うシーンにワクワクしていましたけど、それを軽く超えましたね。