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ワンオペ育児問題の疲弊。母は家庭を、父は仕事を頑張りすぎている?

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Photo by freestocks.org from Flickr

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 核家族化がすすみ、ひとりの親(多くは母親)が家事・育児を担わざるを得ない(ワンオペレーション)ことを言い表す「ワンオペ育児」は、あらゆるリスクを伴うことが指摘されるようになってきました。専業主婦世帯においても、共稼ぎ世帯においても、まずは両親ふたりで育児に参加できるよう、長時間労働を強いられる企業風土の見直しや、上司(イクボス)の理解、それぞれの夫婦・特に父親の意識改革の必要性などが叫ばれています。

男性も家に帰りたいんじゃないですか? ワンオペ育児にならざるを得ない社会から、子育てを許容する社会へ

 6月、この問題について首都圏在住の3040代の親たちを中心に取材し、その過酷な状況をまとめた書籍『ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常』(毎日新聞出版)がリリースされました。著者は明治大商学部教授の藤田結子さん。毎日新聞経済プレミアに、「育児サバイバル」のタイトルで連載していたものです。

 その藤田さんとジャーナリストの治部れんげさんが、日経デュアル「ワンオペ育児からの脱出法 特集」にてこの問題を語り合っています。お二人はともに現役のワーキングマザーとして、ワンオペ育児がなくならない素因と考えられるものを提示されているのですが、イメージされる夫婦・家族像、またその層が、やや限定的であることに私は違和感を覚えてしまいました。

「幸せな妻像」のダブルスタンダード、恋愛時の「魅力」が出産後は「ムカつく点」に、残業月何時間なら可能?」718日付)

 まずワンオペ育児がなくならない原因が複数あげられています。本音ではワンオペ育児がつらいし夫に不満がある、でも人からは幸せな妻に見られたくてSNSでは“幸せファミリー”を投稿してしまう女性の「ダブルスタンダード」があること。そもそも日本の女性は、他国の女性と比べて家事の負担が高くても不満を持ちにくい傾向にあること。ワンオペ育児に不満を抱いても、いざ離婚となると“貧困”リスクが頭をかすめ躊躇してしまうこと。恋愛ではバリバリ仕事をやって稼いでいる男性が魅力的に映りがちなこと。ところが結婚して結婚して子供が生まれたら、それらが「ムカつきポイント」になること。片や男性は、恋愛でも結婚でも出産でも、女性に求めるものが大きく変化しないこと。男性が育児参加するために長時間労働を失くすことはすごく重要だが、それだけでは変わらない場合もあること(「早く帰るのに、本当にやらない男性」もいる)……などです。

 これらのことは、藤田さんが『ワンオペ育児 わかってほしい休めない日常』で指摘したことの繰り返しでもあります。本当は早く帰宅できるのに、家に帰って家事育児をすると安らげないので帰りたくない男性もいる、という点も藤田さんは憂えていました。

 私自身はシングルマザーなのでワンオペ育児であることは以前の記事に書きました。その際、私の子がお世話になっている保育園では父親の送迎も多いこと、しかし平日日中に開催される保護者会や面談への参加率は圧倒的に母親のほうが高いことも書いています。とはいえ、様々な働き方のご夫婦がいて、スーツを着て保育園にやってくる父親ばかりでは全くありません。自営業だったり、会社勤めだけれど柔軟な働き方をしているという父親も少なくないように見えます。

 翻って、藤田さんと治部さんが対談で想定する夫/父親像は、あくまでも社内競争に明け暮れる高所得のホワイトカラー正社員男性ではないでしょうか。言い換えれば<ハイスペ男性>とも呼ばれる層かもしれません。そうした働き方を選択し、社内競争を強いられている男性たちに対して、「仕事(ワーク)よりも、もう少し家庭(ライフ)のバランスを」と説いても、果たして伝わるものなのか……そこは読んでいてどうしても疑問に感じてしまいました。さらに、「終身雇用で昇給していく時代なら、社員の会社への滅私奉公は容認されるのか」ということも。

終身雇用なら長時間労働もアリなのか?

 今の日本経済の状況と照らし合わせ、治部さんは「そんなに働いたって今そんなに稼げない」、藤田さんは「稼げないし、そんなに全員出世もできないし、生産性も悪いわけだし、家に帰ったら、妻と子どもに煙たがられるし(笑)。何のためにおまえはそんなに働いているのか、と問いたい。いいことないですよ。長時間労働し過ぎて、思考停止になっていると思います」と言及します。

 日本の経済は低成長であり、かつてのようにホワイトカラー男性の賃金カーブ上昇は見込めず、「たとえお父さんが家族をかえりみず会社のために身を捧げても、会社は彼とその家族の生活を一生支えられる保証はない」「それなのに、数十年前と同じように、普通のサラリーマンにまで、極端な仕事優先、会社優先を求める企業は、私は間違っていると思います」と治部さんは言います。それはもっともだと思います。ですが、たとえ会社が社員の家族に対して定年までの経済的な責任を持つとしても、それを理由に社員に長時間労働を強いていいわけではありません。モーレツサラリーマンが是とされた時代、男性は家族を人質にとられていたようなものであり、その働き方自体を私は肯定的に捉えられないからです。

 もし会社が労働者の生活を一生支えると約束するなら、労働者に長時間労働を求めてもかまわないのでしょうか。不景気で労働者を守れる保障ができない会社が労働者に「せめて」与えておくべきものが自由時間・精神の自由なのでしょうか。果たして経済的保障と、自由時間・精神の自由は、等価交換し得るものなのでしょうか。どの程度の給与を得ているにしても、終身雇用を約束されてもされなくても、「普通のサラリーマン」は奴隷ではない「普通の人間」として自由を持ち得ます。

 単純に「会社は滅私奉公を求めてはならない」という認識が社会の隅々まで広がって欲しいと思います。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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