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ネガティブは悪いことじゃない。ポジティブ強制社会で不安になっちゃう人へ/『それでいい。自分を認めてラクになる対人関係入門』

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『それでいい。自分を認めてラクになる対人関係入門』(創元社)

『それでいい。自分を認めてラクになる対人関係入門』(創元社)

 ネガティブとポジティブ、どっちが大事? どっちが必要? どっちが好き? と聞かれたら、多くの人はきっと「ポジティブ」だと答えるだろう(だいぶ変な質問だけれど)。

 不満を訴えたり愚痴を言ったりした時、「もっとポジティブに考えなよ!」と叱咤激励してくる人がいて、それをウザいと思ってしまう自分がいる。不満や愚痴はネガティブ感情で、できれば持たないほうが良いと思われているようである。

 でもなぜ、ネガティブだといけないのか。ネガティブなまま生きていちゃいけないの? ポジティブってそんなにいいもの? 人はポジティブにならないと幸せになれないの?

 先月刊行された、細川貂々・水島広子著『それでいい。自分を認めてラクになる対人関係入門』(創元社)は、自分の中にあるネガティブを受け入れ、認め、大切にしていくための道標となり得る本だ。

 自身と夫(ツレ)の体験を綴ったエッセイ漫画『ツレがウツになりまして。』(幻冬舎)がベストセラーになった“自称・ネガティブクイーン”の細川貂々さんと、精神科医で対人関係療法専門クリニック(水島広子こころの健康クリニック)院長の水島広子先生の対話がマンガで描かれた同書。620日に発売され、わずか2日後の622日には重版となった。自分のネガティブ思考を扱いかねる一方で、社会に蔓延するポジティブ啓発文化に戸惑い、生きづらさを抱えている人が沢山いる、ということなのだろう。

気づきを繰り返していく

 貂々さんは物心つく頃より、今は亡き実母に「あなたは何もできないコだから何もしなくていい」「人には自分のことを悪く言いなさい」「嬉しい・楽しい・喜びなどを見せるな、言うな」「ネガティブな自分を演出して生きるのが人生を上手く生きる秘けつ」と言われ、その通りに生きてきた。『ツレウツ』のみならず数々の著作をしたため、夫や子供に恵まれて、傍からは幸せそうに見られる現在の彼女だが、自分自身を<何よりネガティブなことばかり一日中考えている。私は最悪なネガティブ思考クイーン>と評する。

 ある日、実母が自分に言ってきたことを思い出し、私を立派なネガティブ思考クイーンに育てのは母だった、と気づくのだが、だが今度は、気づいたからといって簡単に変われるわけじゃないことに気づく。この本は貂々さんの気づきの繰り返しだ。

 水島広子先生が行っている、精神療法のひとつである対人関係療法は、「病気は対人関係の中で発症し対人関係の中で治る」という部分に焦点を当てていく治療法で、日本を含め世界中で急速に普及しているという。

 人は人と接していないと生きていけない。でも人と接するから悩む。自分がどんな人間であるかという感覚は、身近な人間関係の中で養われる。人間関係がうまくいくと自己肯定感が高まり、行き詰ると自分はダメな人間だと思う。たとえばうつ病の発症や経過は、現在進行中の身近な人間関係の性質から大きな影響を受けるし、逆に、病気そのものも人間関係に大きな影響を与える。だから対人関係療法は、「対人関係から受けるストレスを減じ、対人関係から得る力を増す」ことを目指す。人との交流やコミュニケーションを通じていろんなことに気がつけるようになると、ある程度自分や人に対する信頼感が出てくる。そうすることで今現在の生活を良くしていく。健康的で常識的な人間関係を学んでいくというものだ。

 ただ、対人関係療法はいわゆる病気の人のための治療法(日本では保険外治療)なので、病気なわけではなくて悩みがあって苦しい人は対人関係カウンセリングが有効とのこと。貂々さんと水島先生の会話を、対人関係療法の考え方を応用してまとめた本書は、「病気というわけでもない、しかし生きづらい」という一般の方向け(病気の方も大歓迎!とのこと)で、しかもマンガなので大変読みやすいものとなっている。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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それでいい。