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子育て中の手抜きファッションを「大目に見てもらう」? 「VERY」が提案する自由なオシャレとは

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「VERY」 2017年 09 月号(光文社)

「VERY」 2017年 09 月号(光文社)

 87日発売「VERY」(光文社)9月号。表紙のど真ん中に躍る「お母さんマインドから自由になりたい! 子育て中を言い訳にしないオシャレ、できてる?」というコピーに、スルーできない何かを感じ、生まれて初めて「VERY」を購入してみました(まさか自分がこの雑誌を買う日が来るとは)。魅力を感じて惹かれたという意味ではなく、「“言い訳”、って……」と衝撃を受けたのです。

 これまでにも美容院や歯医者の待ち時間などで何度か手に取って読んだことはあり、その分厚さと重量感は承知していましたが、今号もやはり重厚。物体としても内容としても、です。読むのに心身のエネルギーを要しました。

 30代の既婚子持ち女性をターゲットにしたママ雑誌であり、ファッション誌であり、ライフスタイル誌である「VERY」は、紙面に登場する方々(モデル・読者モデル)も、30代子持ち女性が中心です。皆さん、当たり前ですがとてもファッショナブルで洗練されています。プロがヘアメイクとスタイリングをしてプロが撮っているページがほとんどですから、素敵に見えるのは当然、私の子供が通っている保育園で、「VERY」に登場するようなママはほぼ皆無……なのも当然(だってリアルだから)。素敵だなとは思うものの、真似してどうこうなる話ではないと思うのですが、でも「VERY」がとても売れている雑誌であることは疑いようがありません。

 一般社団法人日本雑誌協会のJMPAマガジンデータによると、2015101日~2016930日の間で最も発行部数が多かった女性向けライフデザイン誌は「VERY」とのこと。201713月の印刷部数公表を見ても、「VERY」は同ジャンルの中で最も発行部数が多いことがわかります(ちなみに2位は「LEE」(集英社)、3位は「STORY」(光文社)。生活情報誌要素の強い「LEE」は幅広い年代から読まれるのかも)。

 それだけ読まれているようですが、私の生活圏内(都心まで電車で30分ほどの、関東近郊地域)では、多くの子連れ女性が集まる場所であっても、「VERY」から飛び出したようなママさんは滅多に見かけません。実生活の参考というより「憧れ」があって購入している方も多くいるのかもしれません。

子育てはちゃんとすべき、その上でオシャレも…

 さておき、2017年9月号の大特集「お母さんマインドから自由になりたい! 子育て中を言い訳にしないオシャレ、できてる?」は、p507728ページに渡って掲載されているのですが、p5051(トビラと呼ばれる、特集の表紙にあたるページ)を開くと、「子育て中を言い訳にしないオシャレ、できてる?」とデカデカ書かれ、さらにその下には、子育てで忙しすぎるお母さんに宛てた、オシャレ啓発メッセージが……。長いですが引用させてもらいます。

「久しぶりに一人で出かける日。抱っこひもをしないで、ベビーカーも持たずに外に出ると、急にファッションに自信がなくなる。そんなことありませんか? 子育て中なのをオシャレができない言い訳みたいにして、カジュアルすぎる服も、手抜きのオシャレも、なんだか大目に見てもらっているような感覚。ママなら誰しもが覚えがあるはず。だけど、例えば、電車に一人で乗ったとき。独身の女友達と会うとき。産後復帰して、1年ぶりに出社するとき。そんなとき、自分に自信が持てるオシャレ、できてますか? お母さんだからオシャレできないわけじゃない。子育てで忙しすぎる毎日だけど、大事なのは自分からあきらめないこと。もっと自由な気持ちで、この秋はオシャレを楽しんでみませんか? それがきっと、お母さんとしての自信にもつながるはずです。」

 「VERY」読者層たちが、子育てに全力投球している前提で、その上で、それでもオシャレやりましょう(本当はやりたいでしょ?)、手抜きのオシャレなんかしちゃっているうちにどんどん自信失くしちゃいますよ(危機感持ちましょう!)、あきらめたらそこで試合終了だよっ!と、ポジティブに背中を押しているのだろうことはわかるのですが、「母親」に“もっと”頑張ることを勧めている格好です。うーん、この雑誌が「一番売れて」しまうのですね。

 「VERY」のメイントピックはファッション。洋服、靴、鞄、時計、アクセサリー、コスメなどの美容関連商品の広告が誌面を彩り、雑誌を重量級にしています。オシャレすることを勧めて、読者を“モノを買いたい気分”にさせるのがファッション雑誌の役割で、特に「VERY」の場合、お母さんになる前は目一杯オシャレを楽しんでいた女性、という読者像があるとも思います。それは良いのですが、「ママ“でも”オシャレ」と煽ったり、「子育てを“言い訳”にしない」と脅したりする手法は、正直、いただけないのではないでしょうか(あまりに今さらすぎる話ではありますが)。

 引用したリード文には「子育て中なのをオシャレができない言い訳みたいにして……大目に見てもらっているような感覚」とありますが、一体どこの誰に大目に見てもらっているのでしょう? 夫や友達、同僚、あるいは世間でしょうか。こういった一文を取っても、同誌の提案する“オシャレ”が、自分が楽しむ以上に“他者から認められ賞賛を得るためにするもの”であるように受け取れます。だから私には、読むだけで疲れてしまうし、必要以上に脅迫的に感じてしまうのかもしれません。忙しさを言い訳にせずオシャレをがんばることが、「VERY」の考える、自由な気持ち、自由なオシャレ、お母さんの自信の源、ひいてはお母さんマインドから自由になることだとは、思えないのです。むしろ不自由を感じてしまいます。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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VERY(ヴェリィ) 2017年 09 月号