なぜ、ほとんどの人の財産に相続税がかからないのか。
人が亡くなれば多かれ少なかれお金や家などが遺ることになります。しかし先ほど書いたように全ての人に相続税がかかるわけではありません。「死んでしまった際にある程度の財産が遺されても、一定額までは相続税がかかりませんよ」というルールがあるのです。ほとんどの方は、この一定額(基礎控除といいます)に収まってしまうので、相続税がかからないという仕組みです。
一定額がいくらになるのかは、以下のような計算式があります。
・相続税の基礎控除額 = 3000万円 + 600 万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数の概念は少し難しいので、ざっくり「遺された家族」と考えてみましょう。1人遺されたなら3600万円、2人なら4200万円、3人なら4800万円までなら非課税となります。
この範囲に収まるようであれば、その時点で非課税条件をクリアするのですが……。「いやいや、自宅のある土地、生命保険も加えれば、超えてしまう!」と不安になった方も多いのではないでしょうか?
安心してください。その場合でも、クリアとなるチャンスがたっぷりあります。
まず、相続人が配偶者のときですが、1億6000万円(または、それ以上)までは相続税がかからない「配偶者の税額軽減」というものすごいルールがあります。
次に、土地と自宅を相続した場合です。亡くなった人と同居していた親族がそのまま住み続けた場合、その他条件を満たせば、土地の相続上の金額(相続税評価額)を80%も減額してもらえます。これで、クリアとなるケースはとても多いです。
また、生命保険金、死亡退職金を受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」について相続税が非課税という特別ルールがあるので、それを超えた保険金額だけが税金計算の対象になり得ます。受け取った額をまるまる合算しなくて済むのです。
相続税よりも心配すべきこと
ここまでの解説で、ほとんどの人に相続税がかからないことやその理由はわかっていただけたと思います。
でも、結果的に相続税がかからないとしても、「相続」は発生しています。相続に関係する業界では、相続を揶揄し「争族」と当て字に置き換える定番ネタがあります。そのネタをベタに感じるほど、少しの財産をめぐっての争い、揉め事、陰口がつきものなのです。相続が争族にならないよう、遺された家族で円滑に進めていかなければなりません。
また、親が亡くなって相続税がかからない場合でも、その後もう片方の親が亡くなって相続が発生した際、非課税条件をクリアできる項目が減り、相続税がかかる場合があります。それなりのお金を配偶者に残していった親を持つのであれば、この点はしっかり覚えておく必要があります。
その他、非課税条件クリアの手続きもありますし、亡くなった人の確定申告(準確定申告)も必要で、4カ月(相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月)以内に申告と納税をしなくてはなりません。相続には家族が協力してやらなくてはならない作業がいろいろあることも覚えておきましょうね。
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