現在進行形でエキセントリックな妻と、かつてジャックナイフのようだった妻
樋口 劔さんの著書やインタビューなどを読ませていただいてすごく思うのが、本当に人柄の良い方なんだなと。
劔 気が弱いだけじゃないのかなあ(笑)。
樋口 気が弱いだけだったら、あんなにいいバンドのベーシストは務まらないですよ!
劔 いやいやいや。でも、僕のこういう性質は、うちの妻との相性はすごい良かったんじゃないかなというのは思います。彼女がああいう感じで……男気がある感じっていうか、引っ張ってくれるので。
樋口 うちもそうで、妻が主導権というかマウントを取るタイプで(笑)。僕は劔さんみたいに穏やかな性格ではなく、ほんとはマウント取りたがる人間なんです。ただいかんせん、妻のほうが頭も良いし理詰めで諭されると敵わないんですよね。
劔 やっぱり弁護士さんってすごいんですね。
樋口 鬼なんてもんじゃないです。劔さんは奥様から怒られたりしますか? というか、夫婦喧嘩ってします?
劔 基本的にうちはすごい仲が良い夫婦なんですよ。
樋口 いいなあ~。
――『今日も妻のくつ下は~』でも、「妻に叱られちゃった★」というような描写はあっても、喧嘩の描写はないですよね。
劔 喧嘩はないんですが、彼女も弁が立つ女性ではあるので、理詰めでテンポよく、ポンポンポンと言葉を投げてくるんですね。だから別に向こうはそのつもりはなくても、僕が勝手に怒られてる気持ちになっちゃうというだけなのかなって……。本当にそんなにね、さほど怒らないんですよ、それに「今日は余裕がなくて口調がきつくなってるわ、ごめん」と前もって言ってくれるし。
樋口 へえ~……。
劔 そう言われたところで、ってのはありますけどね(苦笑)。
樋口 うちは恐ろしいですよ。「このハゲー!」「違うだろー!」どころじゃない。あの女性議員の罵声で世間が騒いだときは、「この程度で大騒ぎしてんの?」と思ったぐらい。今度妻が怒ったら録音してネットにアップします。
――大袈裟に言ってません?
樋口 違う違う! こっちは「バカ」とか具体的な悪口はひとことも言ってないんですよ? それにもかかわらず、すぐにキレて、「死ぬ」とか「飛び降りてやる」とか「手首を切り落としてやる」とかエキセントリックに叫び続ける。あまりの怒声に寝た子も起きちゃうほどで。
――それって産後うつだった時期だけじゃなくですか?
樋口 こないだも一週間に4回、ヒステリックに怒り出しました。親子三人でフジロックに行ってるときに。
劔 ええ、雨で大変じゃなかったですか?
樋口 散々でしたねえ。でも二日目は妻がめずらしく優しくて、宿泊先から出ずに息子を一日見ててくれたんですね。自分も見たかっただろうに、僕に「オザケン行ってきなよ」と言ってくれて。ありがたかったですね。こんな優しい面もあるんだ、と思いました。次の日は、宿泊部屋が同じ人が、そばにいようがかまわず、大声でがなり立ててきましたが。
劔 責め立てられるとき、樋口さんも言い返して喧嘩状態になるんですか?
樋口 もちろん言い返すんですが、まっっったく勝てない。論理で詰められても勝てないし、感情でも勝てない。しかも隣近所から通報されかねない声のボリューム。これまで交際してきた全彼女から怒られた時間を合計しても、妻からの怒号・叱責・説教の総時間が圧倒的に上回ってますね。桁が1つ、いや2つ以上多いな。
劔 逆にうちは、怖い妻と気弱な夫に見えるようですが、実はそこまで恐妻家ではなく、仲良くやっていると思います。妻も若い頃は、男をコキおろしたりとか、結構していたとは思うんですけども、今はそんなに……。
樋口 実は僕、犬山紙子さんにお会いしたことがあるんですよ。
劔 えっ、そうだったんですか!
樋口 4年ぐらい前かな? 下北沢B&Bで、僕がもっとも育児の影響を受けた『ママだって、人間』の著者、田房永子さんのトークショーがあったときに。犬山さんはゲストだったかな。劔さんも客席にいました。
劔 えっ、いたかもしれない。
樋口 そのとき一緒に行った彼女が、「あの人が劔さんていう、犬山さんの彼氏だよー」って教えてくれました。
劔 えー!!!
樋口 でね、そのとき犬山さんにご挨拶したら……僕、ボロボロの帽子をかぶってたんですね。そしたら犬山さんが開口一番、「あんた、なんだよその帽子~w」って言われて。
劔 !!!!!!
樋口 え、初対面ですよね? 当たりキツっ! と思って(笑)。
劔 うわあ、ヤバ、ヤバいですね……妻は尖ってましたね、本当に(苦笑)。いや、今は当時よりは丸くはなっているかなと……。
――だから樋口さん、犬山さんのことをものすごい恐妻だと思ってたんですね。
樋口 きょうは互いに「恐すぎる妻を持つ被害者の会」みたいなトークで盛り上がると思っていたのに、その辺は違ったみたいでガッカリ(笑)。